経済産業省とスポーツ庁は、スタジアム・アリーナの新たなビジネスモデルの開発、推進のために「スタジアム・アリーナ推進 官民連携協議会」を2016年7月に設立した。今秋までに資金調達法を盛り込んだ施設整備ガイドラインを作成し、スタジアム・アリーナを核とした街づくりへの支援体制などについて検討するという。

今治に複合型スマートスタジアム計画

 スタジアム・アリーナにおける「ファン体験」の向上では欧米が先んじているが、日本でも徐々に成功事例が出てきている。

 例えば、横浜DeNAベイスターズは、ホームベースからわずか20mと至近の座席や、テレビモニター付きのボックス席など、多様な観戦スタイルに対応した座席を複数設置する工夫などにより、観客動員を大幅に伸ばしている。2012年に平均1万6194人だった観客数は、2015年に1.6倍の2万5546人となり、稼働率で約9割を維持している。

 同社は2016年1月に横浜スタジアムの運営会社をTOB(株式公開買い付け)で傘下に収めており、スタジアムで販売するグッズや飲食の企画も自由にできるようになった。その一例が、スタジアム内での球団オリジナル醸造ビールの販売である。同球場で販売されるビールで最も人気になるなど収益にも貢献しているという。

 サッカー元日本代表監督の岡田武史氏が代表を務める「FC今治」の取り組みも、注目度を高めている。FC今治は四国サッカーリーグを今シーズン制した「J5」相当のクラブだが、2025年にはJ1昇格を目標としている。

 そこに向けたステップとして、運営会社の今治.夢スポーツは現在、5000人を収容できる「J3」対応のスタジアムを建設中だ。

今治.夢スポーツが将来構想を描いている複合型のスマートスタジアム(図:今治.夢スポーツ)
今治.夢スポーツが将来構想を描いている複合型のスマートスタジアム(図:今治.夢スポーツ)
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 将来的には「J1」対応の1万5000人を収容できる複合型スマートスタジアムの新設を計画している。地域経済の核として、スタジアムに宿泊・娯楽、文化・教育、医療・福祉、災害拠点などの各種施設を統合するとともに、ドイツSAP社の支援を受けて競技・施設関連のデータを統合管理・分析する「今治Lab」の開設を予定している。多彩な機能を持つ複合型スタジアムにすることで、「非スポーツ」の利用時にも地域住民が集う場所となることを目指している。