8割が「スタジアムに来る機会が増える」

 今回の実証実験で、関係者は大きな手応えを得たようだ。来場者にアンケート調査を実施したところ、回収率が非常に高かった。全体で7000名超のうち807名が回答したという。結果は、807名の90%が映像配信が「面白い」、85%がSNSと大型ビジョンの連動が「面白い」、82%がスタジアムへ足を運ぶ機会が「増える」と回答した。

 大分フットボールクラブ 代表取締役の榎徹氏は、「実際にファンの方々が集まって楽しんでいる様子を見て、期待が高まった。試合を応援して帰るだけではなく、始まるまでの時間やチームとの距離感を縮めることで、よりのめりこんで、また来たいと思ってもらいたい。サイネージやITを活用して参加型のコンテンツを提供することは、その1つとして有効だと感じた」とコメントしている。

 今回はイベントに合わせた1回限りの実験だが、ネットワンパートナーズは今後、スタジアムの新しい価値創出に向けた提案を加速する方針という。

 米国の先進的なスタジアム・アリーナでは、大量のサイネージを導入し、会場全体で一体感のある演出をして、観客に非日常的な体験を提供している。例えば、米プロアメリカンフットボールNFLのダラス・カウボーイズが本拠地とする「AT&Tスタジアム」(テキサス州、収容8万人)は約3000台、米プロ野球MLBのニューヨーク・ヤンキースの「ヤンキースタジアム」(ニューヨーク州、5万4000人)が約1000台という圧倒的な規模である。

 これらに比べると国内のスタジアム・アリーナのIT化は、まだ“第一歩を踏み出した”状態に過ぎないが、観客の体験向上やビジネスの発展に大きな可能性があることを関係者が確認できたのは明るい兆しと言えるだろう。