クルマで培った知見をスタジアム・アリーナへ――。トヨタ自動車が販売するクルマのシートで約9割のシェアを持つトヨタ紡織が、今後成長が期待されるスポーツ分野への本格進出を目指している。

 同社は2017年7月27~28日に開催された、スポーツ産業関連のカンファレンス「KEIO SDM "SPORTS X"Conference 2017」(主催:慶応義塾大学大学院SDM研究科)に、開発を進めている、スタジアムのダッグアウトに設置する選手向けのシートを展示した。

 座り心地の良さや疲れにくいことが要求されるクルマ向けシートの技術をベースに、身長180cmの選手の体形に合わせて快適性を保つ工夫や、選手の首や左右のわきの下を冷やすために送風機能を実装した。「快適で選手のパフォーマンスを高めることを念頭に置いて開発を進めている」(説明員)。発売時期は未定という。

トヨタ紡織がSPORTS Xに出展した、送風機能付きの選手向けシート
トヨタ紡織がSPORTS Xに出展した、送風機能付きの選手向けシート
[画像のクリックで拡大表示]

 なお、送風機能を実装していないシート自体は、既にJリーグ・名古屋グランパスの本拠地である豊田スタジアムのダッグアウトに設置されているという。

選手の身体状態をセンシング

 トヨタ紡織は、今後の展開として、スタジアム向けシートの“スマート化”を検討している。シートに各種のセンサーを搭載して選手の体温や心拍数、発汗などの生体情報を取得してコンディションを管理したり、選手の体形に合わせてシートが最適な形状に変化したりする、という。

トヨタ紡織によるスポーツ向けの提案をまとめたパネル。センサーを内蔵したシートを研究中
トヨタ紡織によるスポーツ向けの提案をまとめたパネル。センサーを内蔵したシートを研究中
[画像のクリックで拡大表示]

 また、スタジアムの演出性を高めるためのカスタマイズにも対応する。選手と同じシートを観客席にも配置し、スタジアムの一体感を創出する。シートにチームのロゴを付けたり、チームカラーに統一したりするのはもちろん、LEDを搭載して応援シーンに合わせてシートを光らせたりする演出を実現可能にするといったアイデアもあるという。

 もちろん、クルマ向けのシートは、これまで日本の多くのスタジアムに標準で設置されている樹脂製のシートと比較してはるかに高価だ。選手向けを皮切りに、まずはスタジアムのVIPルームなど特設席への提供を目指す。