DeNAがプロ野球の球団経営に携わって約5年。「コミュニティボールパーク」化構想をベースに様々な取り組みを行い、今や客席の稼働率が9割を超える人気球団に生まれ変わった。今年は同構想を街レベルに展開する「横浜スポーツタウン構想」を始動、中核施設となる「THE BAYS(ザ・ベイス)」を3月18日にオープンさせた。横浜DeNAベイスターズ社長の岡村信悟氏は、3月8~10日に開催されたイベント「ヘルスケア&スポーツ 街づくりEXPO2017」(主催:日本経済新聞社、日経BP社)に登壇。ベイスターズの成長の軌跡や、横浜スポーツタウン構想について語った。2回に分けて、談話形式で講演の概要をお伝えする。
横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長の岡村信悟氏。総務省を経て、2016年4月、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。DeNAスポーツの事業部長、横浜スタジアムの社長を兼務すると同時に、2016年10月16日には初代社長の池田純氏の後を継いで、球団社長に就任した
横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長の岡村信悟氏。総務省を経て、2016年4月、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。DeNAスポーツの事業部長、横浜スタジアムの社長を兼務すると同時に、2016年10月16日には初代社長の池田純氏の後を継いで、球団社長に就任した
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 DeNAが球団経営に携わって2016年12月で5年がたちました。2016年シーズンは、主催した72試合の合計で約194万人が来場。この数字は、買収直前の2011年シーズンと比較すると76%増で、伸び率は12球団でダントツです。

 これは横浜DeNAベイスターズの取り組みが奏功しただけでなく、プロ野球が“再発見”された結果と考えています。(1954~1973年の)高度成長期は「巨人・大鵬・卵焼き」と言われたように、地上波放送で万人が同じコンテンツを楽しむ時代でした。

 しかし、今は違います。地域や多様性に対する意識が進んでおり、スポーツが新たな視点で捉えられています。私が2016年4月に横浜スタジアムの社長に就任してから同スタジアムでは71試合を開催しましたが、そのうち大入りが54回と過去最高を記録しました。横浜スタジアムで地域のチーム・ヒーローを応援する、という楽しみ方がファンに浸透してきたと感じています。

主催試合の年間来場者数の推移(図:YDB)
主催試合の年間来場者数の推移(図:YDB)
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 DeNAは5年前、赤字覚悟で球団経営に参画しました。しかし、売り上げは大幅に増え、2016年1月からの「球団・球場一体経営」に伴い、営業損益も黒字化を達成しました。自立経営が完全に視野に入ったのです。

 もちろん、最も重要なのはファンの満足度です。昨シーズンは初めてクライマックスシリーズに出場し、ファーストステージで読売巨人軍に勝つことができました。最終ステージでは広島東洋カープに敗れましたが、ファンに期待感を持たせるチームに成長しました。

 魅力的な強いチームと、チームを支える強固な事業体制の両輪を、ようやく確立できました。我々は今後、その両輪をきちんと回していくだけでなく、その先を見据えています。

ハマスタだけでできる体験を

 横浜DeNAベイスターズはこれまで、「コミュニティボールパーク」化構想を掲げ、野球発祥の地である米国の好事例を参考にしながら、数々の施策を打ってきました。地域に開かれ、野球をきっかけに人々の間にコミュニケーションが生まれるような「街の活性化の中心」を目指す取り組みです。

 お客様に対しては、野球のコアファンでなくても、横浜スタジアム(ハマスタ)に来れば“ここでしか得られない体験”を多くできるようにすることを目指しました。

 例えば、横浜スタジアムの座席にさまざまなBOXシートを新設。コアファンを30~40歳代男性のアクティブサラリーマン層が中心とし、彼らや彼らの周りにいる野球を知らない女性や子供でも、楽しめる環境を作りました。

 ビールサーバーが付いて仲間と飲みながら楽しめる「スカイバーカウンター」や、家庭でテレビを見るかのようにテーブルを囲みながら観戦できる「プレミアムテラス」などを設置。ベイスターズに対する愛着を持ってもらうために、座席もチームカラーのブルーに変更しています。

横浜スタジアムの座席改修の例(図:YDB)
横浜スタジアムの座席改修の例(図:YDB)
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