グラウンドでキャッチボールしてから出勤
西田 DeNAベイスターズの社員の人たちと話していて面白いのは「ライバルは他球団ではない」とよく言うことだ。横浜中華街やディズニーランドなど、人が集まる場所がライバルだという。
やはり、純粋な野球ファンのためだけに球団を運営していると集客には限界がある。純粋な野球ファン以外を取り込む仕掛けが重要になる。
先ほどのシート以外の取り組みの1つが、2015年シーズンに始めたフォトスポット「DREAM GATE」だ。通常、スタジアムが立地する横浜公園から内部は見えないが、選手の練習時などにバックスクリーン下の搬入用のドアを開けて、練習風景を外から見られるようにした。写真も撮影できるよう「フォトスポット」化したのだ。
その反響が良かったこともあり、2016年シーズンには「DREAM GATE CATCHBALL」を始めた。ナイトゲームが開催される朝7時~8時半までの時間帯にグラウンドを無料開放し、キャッチボールができるようにした。親子でキャッチボールを楽しんでから 会社に行くという“エクストリーム出勤”ができる。 木村 DREAM GATE CATCHBALLのオープニングイベントを実施したときは数百人が集まった。「コミュニティボールパーク」化構想を進めるにあたって、本家の米メジャーリーグ(MLB)のスタジアムなどを数多く視察されたと聞いている。
木村 社内で議論していてよく名前が出るのは、サンディエゴ・パドレスが本拠地にしている「ペトコパーク」。公園の中に野球場があるようなイメージだ。外野席の一部は観客席がなく、スタジアムが立地する公園から内部が見える。試合が無いときは、誰でも無料で見られる仕掛けだ。ただし、試合があるときは公園への入場が有料になる。
ピッツバーグ・パイレーツの本拠地「PNCパーク」は、街の景色の一部としてスタジアムが存在している。
またシアトル・マリナーズの本拠地「セーフコフィールド」は、外野のスタンド前にバーベキューができるスペースがある。お肉を焼いている人は、野球に集中していると肉が焦げてしまう。だから、野球に集中しなくてもいい。空気感を楽しめればいいという発想だ。
西田 実は、ペトコパークは横浜スタジアムを参考にして設計した、という話がある。なぜなら、スタジアムが公園内にある「パーク・イン・パーク」だからだ。
木村 でも、実際に行ってみたらペトコパークの方が、“一体感”という点で上だった。横浜スタジアムは公園とスタジアムが分離していて“要塞”みたいに見えるが、ペトコパークはまさに公園と一体化している。これが、我々がDREAM GATEを始めることにつながった。 (次回に続く)