言葉としては定着した感のある「IoT(Internet of Things)」。取り組みも研究開発ベースからビジネスベースへ拡大しつつある。ユビキタスやM2M(Machine to Machine)の時代から数々のプロジェクトに携わる森川教授に、IoTへの期待や、今後の適用分野などについて聞いた。

―IoT(Internet of Things)を戦略テーマとして掲げる企業が増えている。どのように見ているか。

森川 博之 Hiroyuki Morikawa
森川 博之 Hiroyuki Morikawa
1987 年、東京大学工学部電子工学科卒。 1992年、同大学院博士課程修了。工学博士。 2006年、東京大学教授。2007年より現職。 ユビキタスネットワーク、センサーネットワーク、モ ノのインターネット/M2M/ビッグデータ、無線 通信システムなどの研究に従事。電子情報通 信学会論文賞(3 回)、情報処理学会論文賞、 ドコモモバイルサイエンス賞、総務大臣表彰、 志田林三郎賞など受賞。新世代M2Mコンソー シアム会長、OECDデジタル経済政策委員会 (CDEP)副議長など。総務省情報通信審議 会委員、国土交通省研究開発審議会委員、文 部科学省科学技術・学術審議会専門委員な ど。

 IoTは昨年(2015 年)、大きくブレークした。個人的にうれしかったのは、経営層の意識が変わってきたこと。「うちでもIoTを適用できるところはないのか」という意識になりつつあるのは、とてもいい傾向だと思っている。

 これは、ICTの位置づけがコスト削減ツールから価値創造ツールへと変わったことを意味する。IoTをきっかけに、日本でもようやくICT がポジティブに、アグレッシブに捉えられるようなった。

―以前に盛り上がったユビキタスやM2M(Machine to Machine)と、今のIoTは何が違うのか。

 それらを特に区別していない。技術も狙っている世界も一緒だからだ。

 ただしユビキタスやM2Mがもてはやされた頃とは、利用に向けた環境が違う。センサー、無線通信、クラウドの3つがこなれて、誰でも使えるように手ごろになってきた。仮に10年前に同じことをやろうとすると、かなりマニアックにならざるを得なかった。