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Bリーグ、日本スポーツ界の革命

Bリーグ、データ活用と権益統合で新たなプロスポーツ組織に

Bリーグ事務局長 葦原一正氏が語る“勝負の2年目”(その4)

2017/09/29 05:00

久我 智也

 2016年9月に開幕し、大盛況のうちに1年目のシーズンを終えた男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」(以下、Bリーグ)。Bリーグはどのような事業戦略で成功を勝ち取ったのか。そして2年目以降のシーズンではどのような展開を考えているのか。2017年7月27~28日に開催された、スポーツ産業関連のカンファレンス「KEIO SDM "SPORTS X"Conference 2017」(主催:慶応義塾大学大学院SDM研究科)で、Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏が登壇し、その内幕を語った。前回に引き続き、その要旨を談話形式でお伝えする。
Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏。早稲田大学大学院を卒業後、外資系戦略コンサルティング会社を経て2007年にプロ野球のオリックス・バファローズに入社。2012年には横浜DeNAベイスターズに入社し、社長室長として事業戦略の立案やプロモーション関連業務などを担当。2015年にジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグに入社し、Bリーグの立ち上げに参画した
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NBAに学ぶ

 Bリーグは「デジタルマーケティングの徹底推進」と「代表、リーグ、クラブの権益の統合」という2つの事業方針を打ち立てました。デジタルマーケティングを推進してデータを集め、“スーパーデータベース”を作ることを目指しているわけですが、「データの活用」という点で参考にしているものがあります。

 それは米プロバスケットボールリーグNBAの「TMBO(Team Marketing&Business Operation)」という組織です。これはNBAに所属するコンサルティンググループで、チケッティングに関するさまざまなデータを収集・分析して各クラブにフィードバックをしています。過去には米プロ野球リーグのMLB(メジャーリーグ)もこうした組織を作ろうとしたものの、あまりうまくいってないようです。

 ではなぜ、NBAはうまくいっているのか。実際にTMBOの方々にヒアリングしたところ、その理由は「MBA(経営学修士)ホルダーと現場を知っている人たちの“ハイブリッド型組織”にしたこと」と「トップのハイ・コミットメント」の2つに尽きると言っていました。

 前者については、当初はMBAなどを持つ、いわゆる“頭のいい人”ばかりを集めてデータの分析を進めていたそうなのですが、現場の経験を通して仮説を出しているわけではなかったため、分析して出てくる答えが地に足がついていないようなものになっていたそうです。

 そこでNBAは、各クラブの現場で働いていた人たちを組織に入れることにしました。現場経験のある人々と優秀な分析力を持った人々をハイブリッドにすることで、効果的な分析と施策の立案を実現できるようになっていったそうです。

 もうひとつの「トップのハイ・コミットメント」は、(組織の)トップがチケットの販売が大事だと言い続けることです。私は以前プロ野球の球団経営に携わっていたのですが、「観客動員が大事だ」と口で言いつつも、経営会議などではスポンサー獲得の話から始まるチームが多くありました。

 しかし私の経験上、それではあまりうまくいきません。NBAの場合、コミッショナーのアダム・シルバー氏が「チケットを売って観客動員を増やすことが大事」と各クラブにも伝え続けていったことがうまく回っている秘訣だと言っていました。

 今、BリーグでもTMBOと同じことを始めようとしています。リーグとしてチケット販売を重視しつつ、コンサルティング会社などで実務経験がある人たちと、プロスポーツの現場で働いていた人たちで組織を作る。そして各クラブのデータ分析と課題抽出を実施し、チケットの売り上げに貢献することを目指しているのです。

葦原一正氏は、2017年10月に開講する「スポーツビジネス創造塾」(主催:日経BP総研 未来研究所)で「Bマーケティング」の詳細について講演する予定です。

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