2016年9月に開幕し、大盛況のうちに1年目のシーズンを終えた男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」。Bリーグは、どのような事業戦略で成功を勝ち取ったのか。そして2年目以降のシーズンではどのような展開を考えているのか。2017年7月27~28日に開催された、スポーツ産業関連のカンファレンス「KEIO SDM "SPORTS X"Conference 2017」(主催:慶応義塾大学大学院SDM研究科)で、Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏が登壇し、その内幕を語った。その要旨を前後編に渡って談話形式でお伝えする。
Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏。早稲田大学大学院を卒業後、外資系戦略コンサルティング会社を経て2007年にプロ野球のオリックス・バファローズに入社。2012年には横浜DeNAベイスターズに入社し、社長室長として事業戦略の立案やプロモーション関連業務などを担当。2015年にジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグに入社し、Bリーグの立ち上げに参画した
Bリーグ理事・事務局長の葦原一正氏。早稲田大学大学院を卒業後、外資系戦略コンサルティング会社を経て2007年にプロ野球のオリックス・バファローズに入社。2012年には横浜DeNAベイスターズに入社し、社長室長として事業戦略の立案やプロモーション関連業務などを担当。2015年にジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグに入社し、Bリーグの立ち上げに参画した

「BREAK THE BORDER」で成功を収めたリーグ初年度

 我々は「BREAK THE BORDER(ブレイク・ザ・ボーダー)」という価値観を組織で共有しています。限界や境界線を壊し、前例にこだわらず、新しいものを創出しようという考えです。プロスポーツ組織として後発である我々が、野球やサッカーと全く同じことをやっても1ミリの価値もありませんので、会議などで何らかのアイデアを出す際にも「それはBREAK THE BORDERなのか?」という視点で話し合いをするようにしています。

 そんなBリーグは2016年9月にスタートしました。開幕戦で話題になったのは世界初のLEDコートの導入です。開幕戦という最も注目されるタイミングで、どこにお金を投資すべきかは大いに迷いました。定石としては広告宣伝にお金をかけていくことかもしれませんが、我々は事業規模が小さいので予算に限りがある。ならば、突き抜けたことをして“バズる”ことを目指そうと考え、LEDコートに予算をかけることにしました。思惑通り大いに話題を集めることができ、開幕戦は成功に終わりました。

 新しいものを提供することにこだわっていった結果、2017年5月に開催した「初代王者決定戦」では驚くべきことがありました。なんと、女性の来場者数が男性の来場者数を上回ったのです。私は以前、プロ野球の球団経営に携わっていました。近年では「カープ女子」という言葉が流行になるなど、女性の野球人気が高まっていると言われますが、それでも女性の来場者数が男性を上回るということはあり得ません。しかし、バスケットボールではそれが起こったんです。こうしたことを考慮しても、Bリーグの1年目は大成功だったと言えると思います。

初代王者決定戦の来場者データ。もともと女性人気の高いBリーグであったが、女性来場者が男性来場者を上回ったことに葦原氏も「ショッキングだった」と話す
初代王者決定戦の来場者データ。もともと女性人気の高いBリーグであったが、女性来場者が男性来場者を上回ったことに葦原氏も「ショッキングだった」と話す
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