「ゆりかごから墓場まで」バスケファミリーをサポート

 Bリーグではデジタルマーケティングの徹底推進、すなわちデータを活用することを重要視しており、個人情報を統合してバスケ界の統合DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を構築することを目指しています。

 既存のプロスポーツで言うと、例えばJリーグやプロ野球のセ・リーグは、現在のところデータベースはバラバラです。チケットを買ってくれた人のデータと来場者のデータなどをひも付けることができていない。いわゆるCRM(Customer Relationship Managemant/顧客関係管理)の活用ができていない状況です。これらのデータを連携すればファンにとっても使いやすいものを提供できます。サービス提供側も顧客の動きを可視化することで様々な情報を入手し、分析できます。

 プロ野球のパ・リーグはそうしたデータの連携を、クラブ内で推進しています。その結果、ここ10年で客単価の上昇などを実現できています。ただ、クラブ内の連携にとどまるのではなく、それをリーグ内で実行する方がより良い価値を生むと考え、Bリーグはリーグ内で各種データを連携するようにしています。これによって、クラブ間で情報の共有ができるようになりました。

 我々は今後、リーグだけではなく、代表やアマチュアを統括する日本バスケットボール協会の事業データベースと連携し、さらには競技者のデータベースとも連携させていくことを目指しています。バスケットボールを見る人、やる人をつなげる、そんな“スーパーデータベース”を作り、「ゆりかごから墓場まで」バスケファミリーをサポートしていきたいと考えているのです。

 Bリーグがなぜそこまでデータにこだわるか。理由は2つあります。1つはBtoC(消費者向け)の観点です。データを連携してより良いサービスを提供することで客単価の向上を果たせますし、各クラブの知見にもなる。もう1つはBtoB(企業向け)の観点です。スポンサーの方にこのスーパーデータベース構想を紹介すると、大変に興味を示される。そして一緒に新しい世界を創っていきましょう、という話になっていきます。このスーパーデータベースを作ることは、我々の大きな使命だと思っています。

Bリーグが考えるスマホを活用したDMP活用事案。競技者データベースまでを統合し、バスケを見る人、する人を永続的にサポートするアプリの開発などを検討しているという
Bリーグが考えるスマホを活用したDMP活用事案。競技者データベースまでを統合し、バスケを見る人、する人を永続的にサポートするアプリの開発などを検討しているという
[画像のクリックで拡大表示]

デジタルツールはエリア特性で変わってくる

 デジタルマーケティングについては、1年間リーグを運営していた中で印象的な事象がありました。それはスマホチケットの普及です。Bリーグはスマホで購入し、スマホで入場できる電子チケットを導入しています。コアなファンは紙のチケットに慣れ親しんでいる分、電子チケットがどこまで伸びるのかは読めていませんでした。一方、ユーザービリティ的には電子チケットの方が優れているので、コアファンほど電子チケットを活用していくことになるのではないかと想定していました。

 ただ、蓋を開けてみれば、コアファンだから電子チケットを使い、ライトファンだから紙のチケットを使うという形ではなく、都市圏の観戦者ほど電子チケットを活用するという現象が起きたのです。こういったデジタルツールは、コア層・ライト層で考えるのではなく、エリア特性で考えるべきなのだということは、私の中でのひとつの発見でした。

 「コアファン」と「ライトファン」という点についても発見がありました。競技に関わらず、プロスポーツ組織やクラブにとっては「いかにライトファンに来てもらうか」が重要です。

 そのためのアプローチとして「ライトファンはどこにいて、何を好むか」といったことを調査し、例えばライトファンが多く住んでいそうな沿線に広告を打ったりしています。しかし、ライトファンが現地に足を運ぶ動機は「選手やチームを見てみたい」というよりも「コアファンな友人・知人に誘われたから」という方が圧倒的に多いんです。

 したがってBリーグはライトファンに来てもらうために、コアファンの属性を分析し、コアファンがどこにいて、どういう情報を与えれば周囲のライトファンを誘いやすくなるかということを考えるようにしています。例えばチケットも複数枚一括で購入したら安くなる仕掛けや、購入したことをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でシェアしやすいインターフェースでウェブサイトを設計するなど、こうした取り組みを重視しています。(談)

(次回「Bリーグ、データ活用と権益統合で新たなプロスポーツ組織に」に続く)