明確なペルソナ像を設定

 そもそも、バスケットボールは高いポテンシャルを持っているスポーツだと思っていました。それは、世界で最も競技者人口が多いことに由来します。実はバスケットボールは、全世界で4.5億人もの人がプレーしています。これはサッカーの2.6億人を上回る数字であり、国内に目を向けてみても、サッカーの96万人に次いで63万人もの人がプレーしています。バスケットボールは女性もプレーしやすいスポーツなので、こういった数字になっているのです。

 それだけの競技者人口がいるバスケットボールですが、「見るスポーツ」としてはどうなのか。私たちはリーグ開幕前にその点についても調査をしました。2015年に実施したインターネット調査によると、「バスケットボールの試合を生で見てみたい」という来場意向を持った人の数は700万人いました。しかし当時のリーグのユニーク来場者数は30万~50万人ほど。つまり9割以上の顧客を取りこぼしてしまっていたのです。

 我々はBリーグをスタートするにあたり、来場意向を持っているのがどのような人たちなのかということを徹底的に調べていきました。そして次の4つの特徴が見えてきました。

(1)Sociability&Stylish=1人ではなく集団で観戦したい/オシャレに関心がある
(2)Active=家にいるよりも外出することが好き
(3)Mobile/Magazine First=テレビやパソコンではなくスマホや雑誌で情報収集する
(4)Influencer&Trendy=情報発信やシェアも積極的に行い、流行に敏感

 それぞれの特徴の頭文字をとって「SAMIT(サミット)」と呼んでいます。こうやって具体的なペルソナ像を描かなくては、誰に対して施策を打っていくかが曖昧になってしまいます。こうして明確なペルソナ像を設定したことが、後々の戦略にも効果を発揮していくことになりました。

観戦意向を持つ人は700万人いたものの、そのほとんどを取り逃がしてしまっていたバスケットボール。「顕在層」を獲得するために戦略を立てて行った
観戦意向を持つ人は700万人いたものの、そのほとんどを取り逃がしてしまっていたバスケットボール。「顕在層」を獲得するために戦略を立てて行った
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「スマホファースト」で事業推進

 顕在層を獲得し、リーグを成長させていくために私たちは事業の方針を2つ設定し、それらに徹底的にこだわっていきました。方針の1つは「デジタルマーケティングの徹底推進」。もう1つは「代表、リーグ、クラブの権益の統合」です。バスケットボールだけではなく、この2つを推進していくことが、野球においてもサッカーにおいても一番の課題であると私は考えていました。

 そもそもプロスポーツの収入源は4つあります。それは「チケット」「放映権」「スポンサー」「グッズ」です。Bリーグでは「スマホファースト」でこの4つに対応していこうと考えていました。

 チケットはウェブチケットを使って、わざわざ発券せずとも会場に入ることができる。放送はネット中継を中心に実施します。スポンサーについては、他のプロスポーツであればスタジアムにスポンサー看板などを掲出し、クラブ側は露出を精査してスポンサーに報告します。そういったこともしないわけではないですが、Bリーグの場合はデジタルを中心としたアクティベーションでスポンサーにメリットを提供します。

 グッズについてもECが中心です。これらはすべてスマホでできることです。このようにデジタルを活用していけば、データを収集できます。価値を生むデータを使うことで、世界でも最先端のスポーツビジネスモデルを作っていこうと考えたのです。