みんなで仕組みを変えないと、根本的には変わらない

―― ぜひ、Bマーケティングの枠組みを成功につなげて、バスケだけではなく、国内の他の競技でも汎用的に取り組めるようなモデルになるといいですね。

葦原 やはり、米国のスポーツはすごいと思っています。いろいろな報道がある通り、昔は1000億円、2000億円規模だったメジャーリーグが1兆円規模のビジネスになったり、NBAも飛躍的に大きくなっていたり。NFLもすごいですし。日本も野球やサッカーがすごいと言うけれど、まだまだです。そこには構造的な課題があると思います。

葦原 一正(あしはら・かずまさ)
葦原 一正(あしはら・かずまさ)
公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ 理事・事務局長。1977年生まれ。早稲田大学院理工学研究科卒業後、外資系コンサルティング会社に勤務。2007年に「オリックス・バファローズ」、2012年には「横浜DeNAベイスターズ」に入社し、社長室長として、主に事業戦略立案、プロモーション関連などを担当。2015年、「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」入社。男子プロバスケットボール新リーグ(B.LEAGUE)の立ち上げに参画。(写真:加藤 康)

―― 課題は何でしょうか。

葦原 大きいのはガバナンスです。協会、リーグ、チームの役割分担や意思決定の権限のフローが全体最適で議論されていない点が問題だと思います。バスケに関わって一番やりたいことは、その部分です。

 みんなで仕組みを変えないと、根本的には変わりません。もちろん、現場で一生懸命にチケット販売することも大事なのですが、もっと本質的な課題がたくさんあることを世の中に説いていければと思っています。バスケのためではなく、日本のスポーツ界のために。バスケでうまくいったことは他の競技にもフィードバックしますし、失敗したら失敗したで、それも伝えていきたいんです。

 国内ではうまくいっているように見える野球もサッカーも、さまざまなことに取り組んで多くの成果を上げてはいるものの、事業規模で考えたら1000億円程度で欧米に比べて小さい。ほかの競技は、ほとんどマネタイズできていないのが現状です。

 日本のスポーツ界は現状の規模で満足してしまい、子供たちはどんどん体力が弱くなり、ボールも投げなくなり、そもそも運動をしないということでいいのか。このままでは、日本のスポーツの地位はどんどん落ちていきます。デジタルを積極的に活用し、観戦する人を増やし、多くの人がもっとスポーツをするようになってほしいし、それが実現する仕組みをつくっていきたい。私はそう思っています。

(次回「700万観戦予備軍つかめ、Bリーグのマーケティング戦略に続く)

上野 直彦(うえの・なおひこ)/スポーツジャーナリスト
上野 直彦(うえの・なおひこ)/スポーツジャーナリスト 兵庫県生まれ。早稲田大学スポーツビジネス研究所・招聘研究員。ロンドン在住の時にサッカーのプレミアリーグ化に直面しスポーツビジネスの記事を書く。女子サッカーやJリーグも長期取材している。『Number』『AERA』『ZONE』『VOICE』などで執筆。テレビ・ラジオ番組にも出演。初めてJユースを描いたサッカー漫画『アオアシ』で取材・原案協力。構成や編集に協力した書籍に『全くゼロからのJクラブのつくりかた』(東邦出版)、『ベレーザの35年』(ベレーザ創部35周年記念誌発行委員会)、『国際スポーツ組織で働こう!』(日経BP社)、著書に『なでしこのキセキ川澄奈穂美物語』(小学館)、『なでしこの誓い』(学研教育出版)がある。NewsPicksで「ビジネスはJリーグを救えるか?」を好評連載中。Twitterアカウントは @Nao_Ueno