2017年3月3日の発売から6カ月以上が経過した現在でも、品薄で入手しにくい任天堂の新型ゲーム機「Nintendo Switch」。2017年6月にはSwitch本体の「品薄のお詫び」を発表し、7月や8月の出荷増を約束。量販店にはコンスタントに入荷するようになっているが、混乱を避けるため、抽選で販売する施策を取る量販店が多く、品薄状態は変わらない。週末に実施される抽選には、数百人が列をなす。
 こうしたSwitchをめぐる「異常事態」はなぜ起きたのか。前回に引き続き、ゲーム業界に詳しいSMBC日興証券 株式調査部 シニアアナリストの前田 栄二氏に、その理由を分析してもらう。分解スペシャリストのフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ ディレクターの柏尾 南壮氏にも意見を聞いた。(聞き手=根津 禎、山田 剛良)

量販店のSwitch抽選発表の様子(7月30日、秋葉原にて撮影)
量販店のSwitch抽選発表の様子(7月30日、秋葉原にて撮影)
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 確かに、発売から5カ月以上が経過した現在でも、Switchはかなり入手が難しい状況です。この品薄の原因は単純ではなく、いくつかの要因が複合している私は見ています。

 そもそもは発売時に用意した台数が少な過ぎました。発売前に任天堂が設定していた2016年度の販売目標は200万台でした。つまり、発売日である2017年3月3日からの約1カ月間だけで200万台を出荷する計画だったわけです。この台数は新型ゲーム機の「発売月」の台数としてはかなり謙虚な数字です。Wiiはもちろん、Wii Uに比べても少なめで、「固すぎる台数」と言ってもよいでしょう。Wii Uが振るわなかった影響か、任天堂の慎重な姿勢が現れていました。

 ところがふたを開けてみると、2017年3月だけで270万台以上売れました。同社の予測に反してスタートから絶好調で、作っては売れ、作っては売れる――、という状況がその後も続き、現在に至っています。もちろん、初動の売れ行きの良さを見た任天堂は、Switch用部品発注を増やし、Switchを製造するEMS(電子機器の受託生産サービス)に増産を依頼したようです。ですが、そうした発注が本体の出荷量増に反映するまでには時間がかかります。

あまり成功とは言い難かった旧機種の「Wii U」
あまり成功とは言い難かった旧機種の「Wii U」
(出所:任天堂)
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 このようにSwitchの売れ行きは、任天堂の当初予想を大きく上回っていますが、同社は大幅な増産に対してはいまだ慎重な姿勢を崩していないようです。Wiiの大成功を受けて、新型として「Wii U」を出荷する際に、台数を大きく見積もりすぎてしまった苦い経験が影響しているのかもしれません。