日経エレクトロニクス2014年8月18日号のpp.78-87「無線センサーネット構築の基礎、信頼性と低電力を両立する」を分割転載した前編です。

工場や発電所、交通、農業などさまざまな分野で、現場の状態を常に監視し管理や制御に応用するために、無線センサーネットワークへの期待が大きい。ただし、信頼性の高いネットワークを構築するには、センサーネットならではの要求仕様を理解し、構築の勘所を学ぶ必要がある。今回は、センサーネットを実現する標準規格の動向を整理する。

 本連載では、個々のノードが電池で動作する、大規模な無線センサーネットワークを構築する際に重要なポイントを説明していく。まずは、本連載が対象とするセンサーネットワークの範囲を明確にしておこう。

 世の中はセンサーであふれている。家庭では、風呂の自動給湯器、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、湯沸しポットなどが温度センサーを使って制御されている。人は温度によって快不快を感じることから、温度は現在、最も広く測定されている物理パラメーターだ。

 道路に目を転じると、現代の自動車はセンサーの塊といえる。運転手のハンドルの切り方、アクセル、ブレーキの踏み込みの強さをセンサーが感知して駆動系に伝えるだけでなく、加速度、タイヤの回転数なども検知されて、スリップを起こすことなく運転手の意思を車の挙動に結び付ける働きを助けている。

 これらのセンサーは、全てケーブルで給電され、ケーブルによりデータを転送している。利用されるセンサー群が比較的小さい範囲に収まっているので、ケーブルを選ぶのは自然な選択だ。