スーパーメジャーの英BPが公表している「BPエネルギー統計」の2016年版によると、世界の原油生産国トップ5は、上から順にサウジアラビア、ロシア、米国、イラク、カナダが名を連ねる。これら5カ国で世界の原油のほぼ50%を生産している。

 ここで注目すべきは、ここ数年間で生産が増加したのは、米国のシェールオイルとカナダのオイルサンドだけだということだ。いずれもいわゆる「非在来型原油」である。

 在来型原油の生産量は2005年をピークに、以降はほぼ横ばいが続いている。在来型の生産拡大に限界が見えてきたため、非在来型は、在来型に比べて生産コストは高くつくものの、将来性が評価され、ここ10年ほどは特段の注目を集めてきた。

 IEA(国際エネルギー機関)の「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」の2015年版 (WEO2015)においても、オイルサンドは2015年の日量250万バレルから2040年には同450万バレルと、1日当たり200万バレルの増産を見込んでいた。世界の原油生産の拡大にはオイルサンドとシェールオイルのいっそうの開発が不可欠と考えられていた。

 ところが、2014年の油価暴落以降、オイルサンドの将来性に陰りがみられるようになったのだ。市場油価がオイルサンドの損益分岐価格を下回る状況になったためである。これに、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)のパリ協定によるCO2排出削減が追い打ちをかけた。オイルサンドへの期待は、急速にしぼみつつある。

アスファルトか石炭に近いオイルサンド

 オイルサンドはタールサンドとも呼ばれ、極めて粘性の高い原油成分を含む砂岩をいう。在来型原油が、採掘すれば自噴する極めて流動性の高い液状の原油であるのに対して、オイルサンドはその名が示す通り流動性は全くない。性状はむしろアスファルトか石炭に近いくらいで、取り扱いが厄介なのが難点だ。

 オイルサンドの生産プロセスとしては、伝統的な露天掘りと地層内回収法(SAGD:Steam Assisted Gravity Drainage)の大きく2通りある。

 露天掘りの場合、1バレル(159リットル)の重質原油を得るのに、数トンの砂岩を採掘しなければならい。この砂岩に熱湯や蒸気をかけて砂岩から油分(ビチューメン)を抽出する必要があり、この過程で大量の熱エネルギーを消費する。そしてその後は、大量の廃棄土砂(産業廃棄物)が発生する。油分の抽出工程が生産コストを引き上げる主な要因になるわけだが、これに大量の産業廃棄物や汚染対策の費用も加わる。

 その結果、従来の原油(在来型原油)と比較して生産コストがかなり高くつく。露天掘りの場合、地表面の汚染発生に加え、開発が進むにつれて残存資源の掘削深度は深くならざるを得ない。