2015年12月採択されたにCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)のパリ協定。先進諸国は石油などの化石燃料の消費を2050年には現状から80%の削減が求められることになった。

 だが、石油消費を減らす力学は実は環境制約にとどまらない。

 IEA(国際エネルギー機構)が2016年11月に発表した「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)2016」(WEO 2016)は、数年後には石油生産能力が減退し始め、これまで世界の経済発展を支えてきた安価な原油の供給は、2050年には現状から80%程度減少することを示唆している。こちらは原油の資源制約に由来する石油消費削減要求と言えるだろう。

2019年ころから石油生産能力は低下する

 過去、IEAが石油供給の限界を明示したことはなかった。その意味で、WEO 2016が石油の供給力減退を警告したこと自体、歴史的な出来事と言っていいかもしれない。

 WEO 2016には2025年までの短期的な石油生産量の予測が示されている(図1)。

2019年をピークに生産量は減る
2019年をピークに生産量は減る
図1●「世界エネルギー展望 2016」で図示された短期の石油生産予測
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 この図には2019年ころから石油生産が減少する様子がはっきりと示されている。つまり、2019年ころが石油生産のピークと見ているわけである。WEO 2016には「今後、新しい原油開発計画が進められなければ、2025年には日量で1590万バレル不足することになる」と明記されている。IEAはこのままでは新規の原油開発が進展しないと判断したため、あえて図1のような予測を提示したのではないだろうか。

 図1ほど目立たないが、WEO 2016には2040年までの予測数字も表の形で示されている。

 図1からは、2015年時点で日量7000万バレル近くあった既存油田からの生産量は、2025年には同約5000万バレルまで減る。その先については、WEO 2016の本文中に「2040年時点で同2500万バレルまで減少する」と予測されている。2015年から比較するとこれは70%近い減少に当たる。単純に直線で外挿すればその先は、2050年時点で現時点から80%も減少することになる。