これまで裏方に徹してきた大学発自動運転ベンチャーの「ティアフォー」が、ここに来て表舞台へと躍り上がろうとしている。周辺ツールの無償公開や、大手企業との業務提携、各種実証実験への参加などの施策を矢継ぎ早に打ち出した。見据えるのは自動運転産業の「水平分業化」である。

 自動運転車の制御にオープンソースソフトウエアを使う。それもまだ前例のない、最先端の実証実験で――少し前なら考えられなかったことが現実になりつつある。

オープンソースの自動運転ソフトウエア

 2017年6月、愛知県は、車内に人間のドライバーがいない「遠隔型自動運転システム」などを活用した公道を使った自動走行実証推進事業を、全国に先駆けて開始すると発表した。同事業を受託したのは高精度3D(次元)地図の制作などを手掛けるアイサンテクノロジーだが、実験車両を動かす要となる自動運転ソフトウエアの開発を担当するのが大学発ベンチャーの「ティアフォー」だ。

図1 愛知県が2016年度に実施した自動走行実証推進事業
図1 愛知県が2016年度に実施した自動走行実証推進事業
写真は刈谷ハイウェイオアシスで実施された実証実験風景。ティアフォーは実験車両ソフトウエアの構築を担った(写真:愛知県)。
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 ティアフォーが開発する自動運転ソフトウエアは、オープンソースの自動運転ソフトウエア「Autoware」をベースとしている。Autowareは名古屋大学が,長崎大学,産業技術総合研究所などと共同開発した「市街地の公道での自動運転」を目的に開発されたソフトウエアで、交通量の多い市街地においても自車位置や周囲環境を認識でき,交通ルールに従った操舵制御ができる機能が搭載されている。

図2 「Autoware」の構成
図2 「Autoware」の構成
「画像認識」[物体検出]「位置推定」[行動計画]「経路計画」「走行制御」など、自動運転を実現するための機能を一定水準ですべて備えているのが特徴。
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 ティアフォーは、東京大学情報理工学系研究科准教授で、名古屋大学でも未来社会創造機構客員准教授を務める加藤真平氏が中心となって設立された大学発ベンチャーで、Autowareを使った自動運転システム開発や、Autowareを活用するためのコンピュータ、センサーの販売などを手がける。