筆者は、米国中西部ミネソタ州の多国籍大企業で技術者として15年以上働いた後で、シリコンバレーの小さな会社(PDF Solutions社)に移り15年近く働いている。ミネソタ州にいたときは、日本でも名前がよく知られていた化学会社(3M社)で仕事をしていたが、「ミネソタは、どこにあるのか」、「なぜ日本人が、そのような田舎にいるのか」と聞かれることが多かった。

 シリコンバレーに移住してからは、仕事をしている企業の規模はミネソタ州時代に比べて非常に小さくなったものの、「シリコンバレーで働いておられるのですね。(すごいですね)」と一目置いてもらえるようになった。そして、次のような質問を受けることが多い。「シリコンバレーでの仕事・生活は、どんなものなんのですか」と。

 現在でも新聞やウエブの記事で、「シリコンバレー」という言葉が入っていると、特別感があり、新技術を基にした新しいビジネスの展開を期待させる。一方で、シリコンバレーでは人々はどのように働いて、どのように生活しているかは、案外知られていない。

 アメリカのパワーエリート的な起業家ばかりが活躍している場所として語られることが多く、日本人には遠い世界と思われがちだ。実際、筆者の同僚には、全世界でもトップ3%以内の高い能力を自負する人がいる。世界共通一次試験などというものがあれば、1%以内の得点かもしれない。こうした同僚は、緊張感の高い社会および経済環境の中で仕事をしている。しかし、シリコンバレーにも、筆者のような悩み多きサラリーマンもいっぱいいる。この記事では、私の職場における半径3メートルの日常の光景も紹介することによって、シリコンバレーでの仕事や生活の雰囲気を知っていただこうと考えている。