筆者(写真)が副議長を務めているGlobal Smart Grid Federation(GSGF)は2017年8月8日、マイクログリッドに関する白書を発表した。本連載ではこの最新の白書におけるポイントを2回に分けて紹介する。今回は、分散型の電力網を提供するマイクログリッドに今求められている機能は何か、現状はどうなっているのか、また世界各国のマイクログリッドの特徴について実例を示しながら解説する。

 現在の電力網は劇的な変化を遂げつつある。気候変動への対応と温室効果ガス(GHG)排出量削減の必要性に直面して、電力網への再生可能エネルギーの導入は地球規模で急速に増加している。しかし、再生可能エネルギーは天候などの自然条件に左右され、不安定なエネルギーである。このような状況の中、電力網は従来の集中型エネルギーから、太陽光発電(PV)や蓄電池などを含むさまざまな分散型エネルギー(DER)を統合制御する新しい形に変わろうとしている。これにより、上記の課題に対処する。

 ITの進歩がこのような変革を後押しする。一般の需要家は、安価な分散電源や電力貯蔵の普及により単なる消費者から、電力の供給もするプロシューマーへと変わり、電力網上に接続されたさまざまな分散型エネルギーが互いに通信することで電力を融通できるようになってきている。このような双方向型の電力網からは革新的なビジネスモデルが生まれようとしており、これらの分散電源を一定範囲内のエリアで制御する技術として、マイクログリッドが世界各地で用いられ始めている。

マイクログリッドとは何か

 では、マイクログリッドとはどのようなものを指すのだろうか。一般的なイメージとして、独立した小規模系統においてPVや蓄電池、発電機などの分散電源を制御することで、電源の品質を維持し安定して供給するものとされている。しかし、マイクログリッドという言葉が指し示す対象は、国や地域によって異なるのが現状であり、世界共通の定義は今のところない。一つの定義として、米エネルギー省(DOE)が発表している、マイクログリッドの類型がある(図1)。

図1 マイクログリッドの類型(Microgrids by scale)
図1 マイクログリッドの類型(Microgrids by scale)
出所:米エネルギー省(DOE)“DOE Microgrids Program Overview”
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 図1は規模によるマイクログリッドの形態を示したもので、一需要家を対象としたごく小さなものから、電力会社の系統のうち変電所以下すべてを対象とした大規模なものも、マイクログリッドと定義づけることが可能である。また、マイクログリッドの中には、開発途上国における電化を目的とした系統独立型の種類も存在する。しかし、再生可能エネルギーの導入と電力システムの分散化という、欧米および日本における大きな潮流を踏まえ、本連載においては、本系統に接続された再生可能エネルギーを含むマイクログリッドを対象として話を進めていく。