「私の頭の中には未来の社会の完成図がある」――。

 2016年6月に実施された、ある講演会。未来の社会がどうあるべきかを熱く語っていたのは、医療法人社団 KNI 理事長の北原茂実氏。同氏が代表理事を務める一般社団法人「医療みらい創生機構」が開催した、第1回の定時社員総会・特別講演会での1コマだ。

医療みらい創生機構は2016年6月に第1回の定時社員総会・特別講演会を開催(写真:同機構のWebサイトから)
医療みらい創生機構は2016年6月に第1回の定時社員総会・特別講演会を開催(写真:同機構のWebサイトから)
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 そこで議論されていたのは、いわゆる「医療」の話ではない。人がいかに良く生きて、死ぬか。人の生活のすべての過程をプロデュースする産業を、どう構築していくべきかという話である。

 北原氏は、こうした総合生活産業こそが未来の医療のあるべき姿だと訴える。その未来像の実現に向けて不可欠なのは、医療を軸にサービス業や製造業、農業など、人の生活にかかわるさまざまな産業が連携していくこと。医療みらい創生機構は、その具現化のために用意した場というわけだ。

 一方で、北原氏は著書『「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる!』(講談社、2011年)でも知られるように、「医療の輸出産業化」の必要性をかねて叫び続けている。その一つとして、カンボジアでの医療施設「Sunrise Japan Hospital Phnom Penh」の建設を推進してきており、2016年秋に開業する予定だ。

 同医療施設は、医療法人社団KNIの関連会社であるKitahara Medical Strategies International(KMSI)と日揮、産業革新機構の3社が出資する現地法人Sunrise Healthcare Service社により首都プノンペンに設立される。救命救急センターを中心に、脳神経外科や健康診断などの医療サービスが提供される予定である。

 実は、医療みらい創生機構で目指す未来の医療、そしてカンボジアでのプロジェクトは、1つのベクトルの上に乗った地続きの取り組みと言える。その背後に垣間見えるのは、「医療こそが社会を変えられるツールだ」という北原氏の想いである。

KNI 理事長の北原茂実氏(写真:皆木優子、以下同)
KNI 理事長の北原茂実氏(写真:皆木優子、以下同)
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 以降では、この北原氏の想いをひも解いていくと同時に、医療みらい創生機構に参画し、カンボジアでのプロジェクトにも一部かかわっているNECの取り組みについても見ていこう。