引っ越しの「再点」でトラブル

 順調に展開する大東エナジーの電力小売事業だが、思わぬトラブルもあった。引っ越し後に電気の使用を開始することを「再点」というが、スイッチング支援システムがこの再点を十分に考慮していなかったため、電気の供給開始に手間取るケースがあったのだ。

 スイッチング支援システムは小売電気事業者の切り替え手続きを処理するために電力広域的運営推進機関が開発・運用するシステムだ。電力の供給先を「供給地点特定番号」で認識しており、小売電気事業者はこの供給地点特定番号を使って供給先を指定し、スイッチング支援システム経由で一般送配電事業者に手続きを依頼する。

 供給地点特定番号は2016年1月以降、「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」の左上に小さく記載されており、電気を利用中の需要家であれば簡単に知ることができる。だが、引っ越し先で新たに電気を利用する再点では、需要家は供給地点特定番号をあらかじめ知ることができない。分かっているのは、今年春の電力自由化直前までその住所に電気を供給していた大手電力(みなし小売電気事業者)だけである。

 そこで大東エナジーは、供給地点特定番号が分からない物件では特定番号の代わりに住所をスイッチング支援システムに提出して、送配電事業者に手続きを依頼する。このとき、いくつかの案件で送配電事業者が住所と供給地点特定番号を正しく関連付けしていなかったため、住所から供給地点特定番号を特定できなかったのだ。

 すでに供給を開始した4万5300件のうち、こうしたトラブルが数百件発生しており、うち数件で引っ越し日に電気の供給が間に合わなかった。大東エナジーでは、スイッチング支援システムを運営する広域機関や電力・ガス取引監視等委員会にこうしたトラブルを解決するよう要望を出しているところだという。

 前述の通り、大東エナジーは現在、バランシンググループを通して電源を賄っている。だが、契約数が順調に増えていけば大量調達を前提に有利に交渉できるため、バランシンググループを脱退して自分たちが相対取引で電源を調達することも視野に入れている。その際、親会社である大東建物管理が運営する太陽光発電事業も、電源調達先の有力な候補になる。

 大東建物管理は、管理する賃貸物件のうち1万1000棟の屋根上に太陽光パネルを設置する。その総設備容量は140MWに達しており、発電した電力は固定価格買取制度(FIT)を使って売電している。

 「太陽光発電の買取価格がさらに安くなれば、FITを利用せず大東建託グループの自前の発電所として増設していく可能性もある」(望月社長)。その場合は、バイオマスなど夜間のベース電源となる他の再生可能エネルギーとの組み合わせも考えていくという。

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