前回に引き続き、完全自作電動バイクで耐久レース「2016 Ene-1 GP SUZUKA」に挑んだo孕o=3レーシング(オヨサンレーシング)の挑戦をお届けする。今回はコントローラーの設計と実際のレースの顛末をお届けする。

 三相ブラシレスモーターは、通常のモーターと同じようにコイルに電力を与えてローターを回転させます。このとき、U、V、W相という3相それぞれに、位相が120度ずれた正弦波を与えて制御します。モーター本体に組み込んだ「ホールセンサー」でローターの位置を検出して、3相それぞれに与える電力を制御することで、回転速度を変える訳です(写真)。

写真●三相ブラシレスモーターの制御電圧の波形
写真●三相ブラシレスモーターの制御電圧の波形
[画像のクリックで拡大表示]

 こういった制御を行う専用の制御ICも市販されていますが、今回はマイコンボードを使って自作することにしました。制御用の正弦波をマイコンから出力するプログラムを書き、出力にパルス幅変調(PWM)を掛けて波形を作り、これをパワードライバー回路で増幅してモーターに電力を与える、という流れになります。

モーターを制御するコントローラーを設計

 マイコンにはこの種の工作でおなじみの「mbed」を使いました。mbedは英アームが提供しているワンボードマイコンです。開発には「LPC1768」を使い、本番機ではより動作周波数が高い「STM32 Nucleo Board STM32F446」に切り替えて性能向上を狙う作戦です(写真)。

写真●「LPC1768」を使った試作コントローラーの出力波形をオシロスコープで測定しているところ。綺麗な正弦波が出ている
写真●「LPC1768」を使った試作コントローラーの出力波形をオシロスコープで測定しているところ。綺麗な正弦波が出ている
[画像のクリックで拡大表示]

 試作したコントローラーの出力をオシロスコープで確認するときれいな正弦波が出ました。そこで手巻きモーターとパワードライバーの結合テストに臨みました。最初のテストではホールセンサーの出力値がテスト用のモーターとはかなり異なったためモーターを制御できない事態になったりして、プログラムの書き換えが必要だったりしました。