「5Gは、3Gと4Gをもたらした会社が実現する(5G: From the company that brought you 3G and 4G)」——。
スペイン・バルセロナで2017年2月27日から3月2日にかけて開催された「Mobile World Congress 2017」の会場では、米クアルコムのブースに大きく掲げられた上記のような看板が話題になっていた(写真1)。
米クアルコムのブースがある会場のホール3は、韓国サムスン電子や中国ファーウェイといったブースが並ぶ会場の中心である。実はクアルコムのブースのはす向かいに、昨今、5G分野で勢いを増している米インテルのブースがある(写真2)。上記の看板はインテルに向けたメッセージであり、「3G、4Gで実績が無かった会社が、急に5Gだけできるはずがない」という意味を言外に込めたものとして関係者の間で話題になっていたのだ。
5Gのデモで存在感を示すインテル
裏返せば、スマホ向けチップセットの王者と言えるクアルコムが、このようなメッセージを掲げるほど、昨今、5G分野でインテルが攻勢に出ているということである。インテルはスマホ向けチップセット「Atom」を展開していたが、苦戦が続き2016年初めに事実上撤退。代わって5G分野にリソースを集中し、サブ6GHz帯とミリ波帯に対応した5G端末のテスト環境である「5G Mobile Trial Platform」をいち早く出荷した。MWC 2017の会場内でも、スウェーデン・エリクソンやフィンランド・ノキアといった大手通信機器ベンダーの5G NR(New Radio)のライブデモでもインテルのトライアルプラットフォームが軒並み使われていた(写真3)。
米ベライゾンは2017年末から2018年初めにかけて、28GHz帯を用いた固定通信の代替となるFWA(Fixed Wireless Access)用途で5Gを先行導入する考えを示している。インテルのブースでは、このようなベライゾンの5Gユースケースを意識したようなデモも披露していた(写真4)。実際、インテルはベライゾンとも共同で5Gのトライアルを進めている。
トライアル用途ばかりでなく、インテルは5Gの商用プロダクトもアナウンスしている。2017年1月に、28GHz帯とサブ6GHz帯に対応した商用5Gモデム「Intel 5G Modem(コードネームはGoldridge)」を2017年後半に出荷することも発表済みだ。ただしこの5Gモデムは5Gの通信機能のみのシングルモードであり、LTEも利用する場合は、別途、同社のLTEモデムが必要になる。