世界の工場たる製造大国から“製造強国”への飛躍を目指す中国。世界の3強の一角を占めるようになったディスプレーでは、産業の高度化を図ろうと、フレキシブル有機ELやマイクロLEDなどの新技術の開発に力を入れ始めた。こうした中国メーカーから、熱いまなざしを向けられているのが日本人技術者だ。

 こうした技術者一人ひとりの力は、日本の競争力の源泉といえる。ところが、その競争力を維持できなくなる危機が日本に迫っている。日本人技術者が腕を磨く場が急速に失われているからである。ディスプレー業界では事業縮小や撤退が相次ぎ、かつて100%近かった日本のシェアは、今では5%以下にまで落ち込んでいる。

ニコンの露光装置の解像度。
ニコンの露光装置の解像度。
3μmから2μm、さらに1.5μmへと高解像度化が進んでいる
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日本の技術競争力が危うい

 特に深刻なのが、日本での工場投資が急減していることだ。かつて10社近くがひしめいていた日本の大手ディスプレーメーカーは、今やシャープとジャパンディスプレイ(JDI)の2社のみ。しかも、今後の投資規模では、これら2社を中国メーカーや韓国メーカーが圧倒する。

 設備産業のディスプレーでは、最新の製造装置が並ぶ最先端の工場で優秀な技術者がものづくりをすることによって初めて、高付加価値の製品を生み出すことができる。設備投資を果敢に行い、最先端の工場で造らないと、最高の結果は得られないのだ。

 例えば、露光装置。有機ELや液晶を駆動するための半導体素子や配線電極をガラス基板上に作り込むのに必要不可欠な製造装置の一つだ。

 露光装置の重要な性能の一つが「解像度」である。この解像度が高ければ高いほど、より小さい素子や、より細い配線電極を作り込むことができる。その分だけディスプレーの光を遮る領域が減るため、4Kや8Kへといった高精細化や、さらなる低消費電力化を進められる。