「第一に人材。日本人技術者は、ものすごく欲しい」――。中国ディスプレー産業の業界団体、中国光学光電子行業協会液晶分会(CODA)で副秘書長を務める胡春明氏は、日本への期待を熱っぽく語る。中国でTFT液晶パネルの量産が始まってから12年以上がたつ。この間、シェアを下げ続けた日本メーカーに取って代わるように、中国メーカーが台頭した。しかし、中国メーカーが日本人技術者に向ける視線は今もなお熱い。

 矢継ぎ早の大規模投資によって、世界有数の“製造大国”に成長した中国のディスプレー産業。投資意欲は依然として旺盛で、世界シェア1位の座も射程に捉えた。しかし、大国の仲間入りを果たしたものの、中国のディスプレー産業は“もうからない”という大きな課題を抱えている。

 そこで、中国のディスプレー産業が次に目指しているのが、規模で圧倒するだけではなく、高付加価値品を開発できる力を身に付けた「高収益の製造強国」になることだ。しかし、技術力がなければ、製品の付加価値を高めることはできない。技術力という壁にぶち当たった中国メーカーが、救世主として強く期待するのが日本のディスプレー技術者である。

中国版インダストリー4.0の先兵

 製造大国から製造強国へ。これは、中国製造業における国家レベルの10カ年計画「中国製造2025」の方針と一致する。

 「中国製造2025の重点分野に新ディスプレーを位置付けている」――。2016年11月に北京で開催された国際会議「Display Innovation China 2017/Beijing Summit」(主催:中国光学光電子行業協会液晶分会、日経BP社)。中国ディスプレーメーカーの幹部が居並ぶ前で、日本の経済産業省に当たる中国国家工業和信息化部の王威偉氏(電子信息司処長)は壇上から発破を掛けた。

 “中国版インダストリー4.0”ともいわれる中国製造2025の先兵を、ディスプレー産業が担う。製造強国になろうと挑む中国のディスプレー産業。その実像に迫るとともに、日本の技術競争力について考える。