「ピンクならいい」わけじゃない

 一方で、女性客に喜ばれることを狙いながら失敗する取り組みは、「女性だからこういうものが好きだろう」という思い込みによって作られる企画やプロモーションだ。その典型的な例がグッズである。

Jリーグを愛する女子サポーターの団体「Jユニ女子会」共同代表の木下紗安佳氏。2016年1月から本格的に活動をスタートさせたJユニ女子会は、チームの枠を超えて女性同士がサッカーの話をフェアに楽しめる場を作っており、イベントが行われた2016年12月5日時点で418人、38チームのサポーターが登録しているという。
Jリーグを愛する女子サポーターの団体「Jユニ女子会」共同代表の木下紗安佳氏。2016年1月から本格的に活動をスタートさせたJユニ女子会は、チームの枠を超えて女性同士がサッカーの話をフェアに楽しめる場を作っており、イベントが行われた2016年12月5日時点で418人、38チームのサポーターが登録しているという。
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 ユニフォームやタオルマフラーなど、チームの公式グッズはファンの一体感を強めるために非常に有効であると同時に、チームにとっても貴重な収益源の1つだ。それだけではなく、購入した人が日常的にチームのグッズを使っていれば、それだけでプロモーションにもなる。複数のメリットがあるチームグッズだが、そのデザイン性が低いとそもそも購買されないだけではなく、ファンを裏切ることにもなってしまう。自身もJリーグ・浦和レッズのサポーターであるJユニ女子会の木下氏は、チームに貢献したいという思いと、デザイン性に優れたものを使いたいというジレンマに挟まれた経験を語った。

 「サポーターとしてチームにお金を落とすためにグッズを買いたいけれど、欲しいものがなくて妥協して買うということもありました。値段は高いけれど日常使いには全く適していないものもありますし、“これを考えたのはオジさんなんだろうな”と思うことも多いんです(笑)」(木下氏)

 木下氏の場合、公式グッズに満足できない分、「チームカラーを用いたアイテムをハンドメードしたり、チームカラーのネイルや化粧でテンションを上げる」という新しい楽しみ方を発掘しているという。そうした動きは、新しいサポーターを獲得する上で非常に有効ではあるものの、チームとしてはみすみすビジネスチャンスを逃しているということの証左でもある。

 さらに、会場に訪れた人からは「女性向けアイテムならピンクにしておけばいいという風潮は改善した方がいいと思う」という意見も聞かれた。「女性だから」「可愛ければいい」といった思い込みで作られたグッズや企画は、その浅はかさを見抜かれ、女性に受け入れられることはないのだろう。