試合会場での女性向けイベントの肝は「親和性」

 ただし、イベントの参加者からは「スポーツそのものと切り離されたイベントだとその場限りのものとなってしまうし、既存のファンにとっては違和感がある」「スタジアムやそのスポーツと一体になれるイベントがあるといい」という意見も聞かれた。女性にウケそうならば何でもいいわけではなく、「スタジアムやアリーナだからこそ体験できる・楽しめるイベント」でなくてはならないということだ。

資生堂ジャパン コスメティクスブランド事業本部 コスメティクスブランド事業統括部の谷川有加氏。「もともとは野球が嫌いだった」が、「野球観戦メーク」企画実施のために野球に触れていく中で野球ファンになったという。
資生堂ジャパン コスメティクスブランド事業本部 コスメティクスブランド事業統括部の谷川有加氏。「もともとは野球が嫌いだった」が、「野球観戦メーク」企画実施のために野球に触れていく中で野球ファンになったという。
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 成功例は、2016年のパ・リーグ クライマックスシリーズで資生堂が実施した「野球観戦メーク」を体験できるイベントだ。同社が展開する化粧品ブランド「INTEGRATE(インテグレート)」を使い、日本ハムファイターズのマスコットキャラクター「ポリー」をイメージしたメークで、応援を楽しんでもらった。「野球を見る」という観客がスタジアムにいる目的と、商品の特性をうまくマッチさせることで、大好評だったという。

 「単純に製品のサンプリングとしてスポーツとコラボするのではなく、サンプリングをする場所と、そこにいるお客様にとって親和性のあるコンテンツを見つけるために、チームとメーカーが協議していったことが、イベントの成功の要因だった思います」と、資生堂ジャパンの谷川氏は振り返る。

 「資生堂がパ・リーグとコラボしたのは、“新たなスポーツ観戦文化を作っていきたい”というパ・リーグ側の考えと、“美しい生活文化を創造する”という資生堂の企業理念がマッチしたからです。今後、メーカーとスポーツチームがコラボをするときには、そういった視点で協賛企業を選定すると、良い企画やコンテンツを生み出せるのではないかと思いました」(同氏)

 スポーツと女性向け商品・ブランドでは、スポーツや商品を通して消費者にどのような価値を提供していきたいのかが見えれば、いくらでもやれることは増えていく。資生堂とパ・リーグのように、互いの理念が合致するスポーツ団体と企業が結び付けば、相乗効果が高まるだろう。