スポーツ産業に関するイベント「スポーツアナリティクスジャパン2016(以下SAJ)」が2016年12月17日、東京の日本科学未来館で開催された。SAJは日本スポーツアナリスト協会が主催するイベントで、今年で3回目。「BEYOND2020」をテーマに、スポーツにおけるテクノロジーやアナリティクスに関するさまざまな講演が行われた。スポーツ庁長官の鈴木大地氏や全日本柔道監督の井上康生氏などが登壇した。

横浜F.マリノスがデータ提供

 SAJでは、今年(2016年)で2回目となる「スポーツアナリティクス甲子園」(SAP協賛)というイベントも開催された。これは、スポーツアナリティクスの発展・人材育成機会の創出を目指して行われる、学生によるスポーツデータ分析コンペティションである。今年は前年のパフォーマンス部門に加えて、マーケティング部門が新設され、学生たちは自由な発想で考案した施策を披露した。

スポーツアナリティクス甲子園2016の表彰式の様子(写真:浅野智恵美)
スポーツアナリティクス甲子園2016の表彰式の様子(写真:浅野智恵美)
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 マーケティング部門には全部で7チームが参加した。Jリーグの横浜F.マリノスが提供した会員購買などに関する実際のデータを基に、「横浜マリノスの観客動員に対する課題」についてデータを分析、解決策を考察した。

 横浜F・マリノスは、1992年のJリーグ発足当時から加盟しているクラブ「オリジナル10」の1つ。7万人超の収容可能人数を誇る日産スタジアムを本拠地とする。J1クラブの中では観客動員数で上位に位置するが、ビジネス面では入場料収入の拡大を最大の課題としており、日産スタジアム開催試合での平均観客動員の目標として2020年に「4万人」を掲げている。

 2016年シーズンのそれは約2万7000人なので、かなり高い目標と言える。「今シーズンは1試合平均で1000人増えたが、この延長戦上では4万人の到達は難しい」(横浜マリノス事業統括本部FRM事業部FRM&デジタルマーケティング課主担の永井紘氏)。今後のマーケティング施策のアイデアを、外部、そして若くて柔軟な発想に求めた。

 パフォーマンス部門では、「野球トラッキングデータの分析」「サッカーデータの分析」「野球1球データの分析」「自由項目の分析」の4つのテーマから1つを選び、パフォーマンスに関わる新たな評価方法や分析手法を考察した。

 各部門には最も優れた賞として「SAPジャパン賞」が、次いで「日本スポーツアナリスト協会賞」が設けられたほか、パフォーマンス部門には「特別賞」も設けられた。

 表彰式の冒頭、SAPジャパン バイスプレジデントで、Jリーグ特任理事でもある馬場渉氏は、今後の期待をこう述べた。「スポーツ界には、デジタルやテクノロジーを理解した上でリーグ経営やクラブ経営、指導者の育成、チーム作りなどができるリーダーが圧倒的に少ない。デジタルやテクノロジーの知識に長けた方が自身を過小評価することなく、能力を最大限に発揮してほしい」。

 そして、審査結果が発表された。結果は以下の通り。

●マーケティング部門
SAPジャパン賞:慶應義塾大学大学院 理工学研究科
日本スポーツアナリスト協会賞:同志社大学 文化情報学部

●パフォーマンス部門
SAPジャパン賞:慶應義塾大学大学院 経営管理研究科
日本スポーツアナリスト協会賞:筑波大学大学院
特別賞:早稲田大学 基幹理工学部