日本のスポーツ産業の市場規模を、2025年時点で現在の3倍である15.2兆円にまで押し上げる――。スポーツ庁と経済産業省が掲げる成長目標の中で、これからマーケット自体を作っていかなくてはならない分野の一つが「IoT(Internet of Things)活用」、つまり「スポーツIoT」である。スポーツ施設やサービスのIT(情報技術)化推進とIoTの導入によって1.1兆円の市場を形成することを想定している。

 もちろん、新規ビジネスであるだけに課題も多く、道のりは平坦ではない。こうしたなか、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科が主催したスポーツ産業カンファレンス「KEIO Sports X」(2016年10月11日)では、「国内スポーツベンチャーの挑戦」と題したパネルディスカッションが行われ、スポーツIoTビジネスを展開するベンチャー企業の要職に就く4人が「スポーツ産業におけるIoTビジネスの現状と課題、今後」について議論した。

 モデレーターを務めたのは、慶應SDM研究科特任講師/ユーフォリア代表取締役 橋口寛氏。パネリストとして参加したのは、スポーツセンシング 代表取締役社長 澤田泰輔氏、SPLYZA(スプライザ) 代表取締役社長 土井寛之氏、CLIMB Factory(クライムファクトリー) 代表取締役 馬渕浩幸氏の計4名である。ディスカッションの模様を前回に続いて紹介する。

左上は、パネルディスカッションのモデレーターを務めた慶應SDM研究科特任講師/ユーフォリア代表取締役の橋口寛氏。右上は、SPLYZA 代表取締役社長の土井寛之氏。左下は、CLIMB Factory 代表取締役の馬渕浩幸氏。右下は、スポーツセンシング 代表取締役社長の澤田泰輔氏
左上は、パネルディスカッションのモデレーターを務めた慶應SDM研究科特任講師/ユーフォリア代表取締役の橋口寛氏。右上は、SPLYZA 代表取締役社長の土井寛之氏。左下は、CLIMB Factory 代表取締役の馬渕浩幸氏。右下は、スポーツセンシング 代表取締役社長の澤田泰輔氏
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分析という文化が根付けばいい

 スポーツ産業への従事を志望する人材の受け皿と待遇の面に限らず、そもそもIT技術に対する考え方がスポーツの現場に根付いていないことなど、スポーツIoTビジネスの課題はまだまだ多い。

 では、スポーツIoTビジネスの市場規模を1兆円にまで伸ばしていくために最も必要なことは何なのか。パネルディスカッションに参加した業界の“先駆者”たちはこう述べた。

 「現在、文部科学省では教育現場のICT(情報通信技術)化を積極的に推進していて、2020年頃までには小中高校生に1人1台のタブレット端末の導入を検討しています。この計画が実現すれば、学校の部活動でも今以上に有効活用されていく可能性があります。私たちのビジネスはスマートフォン(スマホ)やタブレットと密接に結びついたものですから、こうした流れとうまく合致することができれば、さらなるビジネスの発展につながるのではないかと期待しています」(スプライザの土井氏)