「スプライザが創業した2011年当時、高校生のスマホ普及率は25%ほどで、今我々が扱っているようなアプリを高校の部活にアピールしても顧問の先生方はピンと来ていない様子でした。しかし今ではスマホは日常生活になくてはならないものになりました。そうすると、“スマホで動画を撮影してトレーニング効果を向上させる”という我々の商品について、先生方もすぐに理解していただけるようになったんです」(土井氏)
「また、2016年10月から通信キャリア3社が20GB(ギガバイト)、30GBというような大容量プランをスタートさせました。つまり、動画のような容量が大きいデータをやり取りする制限が少なくなるのです。我々は動画をベースにしたビジネスを展開していますので、このようなインフラ環境の整備は事業の追い風になっていると言えます」(同氏)
近年のスポーツ関連産業の活性化は、現時点ではビジョンの影響というよりも時代の流れによるものが大きいといえるのだろう。
人材の受け皿と待遇という課題
スポーツとIoTが密接に結びつくことは、経済的なメリットを生み出すだけではなく、アスリートのトレーニングを向上させたり、怪我を未然に防いだり、「する」「観る」だけではなく「分析する」という関わり方を生み出す効果がある。IoTは、スポーツをさらなる高みへと導く重要な役割を担っているのだ。そのため、この分野の研究を志す学生たちも増えてきている。だがその一方で、学生たちが大学を卒業した後、学んだ知識を活かす場がないという課題も存在している。
スポーツの分析や計測を行うためのハードウエアを開発・製造・販売をするスポーツセンシングの澤田氏は、そうした学生たちがもがいている姿をよく目にするという。
「スポーツセンシングは大学にも製品を納めているため、学生たちと接する機会も多くあります。しかし、彼らが大学で身につけた知識を発揮するための受け皿は現状、ほとんどありません。多くの学生はスポーツとは関係のない職に就いています。どうしてもスポーツに関わりたいという学生も、大学で学んだことを活かすのではなく、専門学校に入り直して理学療法士になったりしているのです」(澤田氏)
このパネルディスカッションに登壇したベンチャー企業が学生たちの受け皿になることを期待したいところだが、馬渕氏は次のように語った。