2006年のサービススタート後、現在では世界中に3億以上ものユーザーを保有するまでに成長した(2018年9月時点)、ソーシャルメディア「Twitter(ツイッター)」。人と人とのコミュニケーションのあり方を変えたこのSNSはビジネスにおいても有効なツールとして認知されており、多くの企業・組織も活用している。特に消費者(ファン)のエンゲージメントがそのまま利益につながるスポーツにおいてはその傾向が顕著だ。

 ではスポーツビジネスに携わる組織は、Twitterとどのように向き合っていくべきなのか。Twitter Japanのパートナーマネージャー(スポーツ担当)を務める北野達也氏へのインタビューから、「ツイッター×スポーツ」有効活用のヒントを探る。
Twitter Japan グローバルコンテンツパートナーシップチーム パートナーマネージャー(スポーツ担当)の北野達也氏
Twitter Japan グローバルコンテンツパートナーシップチーム パートナーマネージャー(スポーツ担当)の北野達也氏
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「スポーツを消費する場」の変化に伴うTwitterの台頭

――テレビやOTT(over the top)サービスでスポーツの試合が放送される度に、Twitter上は多くのユーザーが試合の感想などをツイートし、盛り上がりを見せています。Twitterの登場は人々のスポーツの見方を大きく変えたという印象を抱いていますが、サービス提供側としては、Twitterとスポーツを取り巻く現状をどのように見ていますか。

北野 Twitterだけの影響というわけではありませんが、スポーツを消費する場が変化していることは感じています。かつてスポーツを消費する場は、リアルの試合会場かテレビだけでしたが、今は「テレビ離れ」という言葉も出てくるくらい、多様なデバイスでメディアに触れられるようになっています。実際、テレビだけではなく、パソコンやスマートフォン(スマホ)でもスポーツの映像が見られるようになっています。

 そうした時代にあって、スポーツのコンテンツホルダーの方々も適切な情報を適切なステークホルダーに届ける努力をしていく時代に移り変わって来ていることを感じています。それに付随して、我々のようなプラットフォームを展開する事業者や、テレビ局やOTTサービスなど、動画の権利を持っている事業者も、コンテンツに対する考え方が変化して来ていることも実感しています。

――「適切な情報を適切なステークホルダーに届ける」ためにはどんなことがポイントになるのでしょうか。

北野 我々は「ビハインド・ザ・シーン」というキーワードを使っているのですが、試合以外の映像、いわゆるオフのコンテンツをファンに届けることが重要だと考えています。試合中の映像は権利的な問題ですべてを自由に使うことができない場合がありますし、そもそも試合中にTwitter上に流れてくることもあります。

ただ、選手たちのトレーニングや食事の様子など、ファンは知りたくともなかなか知り得ない、試合から一歩離れたシーンを出せる範囲で出していくことがエンゲージメントの向上につながるのではないかという考えを持っているのです。

 そうした活用の仕方でファンエンゲージメントを向上させている例として挙げられるのが日本相撲協会です。同協会では、例えば力士の方たちが桜の木で胸を隠した画像をツイートしたりするわけです。まるでグラビア撮影のようですが(笑)、そうした普段はなかなか見られないような画像をツイートしていくことで、いわゆる「バズる」状態を生み出し、数万、数百万という莫大なインプレッション(ツイートがユーザーに見られた回数)を記録しています。

――日本相撲協会の場合、Twitterを始めてから組織に対する印象が変わった人も多くいると思います。

北野 そうですね。当初は協会内でも「Twitterをすることが仕事と言えるのか」という向きがあったようですが、担当者から各部署の方々にTwitterの有用性や広告効果を説いていただいたことで組織内の意識も変わり、次第に積極的に取り組んでいただけるようになりました。