2020年で終わらせてはいけない

 スポーツを通じた強い経済を実現するためには、まずスポーツ人口を増やさなければなりません。そして、収入を拡大する。現在、スポーツ産業市場は5.5兆円と言われていますが、これを拡大していく必要があります。

 どんどん市場を拡大して、増えた分をスポーツ環境に回し、アスリートの創出、スポーツ施設の整備、サービス向上、イベント開催などさらに産業を大きくしていく取り組みを充実させることが大切です。それがまたスポーツ人口を増やすことにつながっていく。こうした好循環を続けていきたいと思っています。

 少し話が変わりますけれども、リオデジャネイロで開催されるオリンピック・パラリンピックが終わった後、2016年10月に日本で「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」という国際会議を開催します。まず京都で、その後、東京で開きます。こうしたフォーラムを通じてスポーツ産業の拡大につなげていきたいという意図もあります。

 「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」には、世界の注目が日本に集まるだろうと思いますので、日本のサービスや商品を海外に発信する絶好の機会です。フォーラムでは、世界のスポーツ大臣を集めたスポーツ大臣会合を開催したいと思っています。また、さまざまな官民ワークショップも開催しながら、フォーラムを新たなスポーツ産業の開拓やスポーツビジネスの海外展開のキッカケにしていきたい。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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 私がスポーツ庁長官の職を受けるに当たって、思ったことがあります。それは、「スポーツが世の中でまだまだ理解されていないのではないか」ということです。

 古い話ではありますが、戦後焼け野原となった日本が今、経済発展を遂げたときに何があったか。古橋廣之進さんや橋爪四郎さんといった水泳選手たちがイモだけ食べて海外の選手に勝った。それを見た人々が「おお、日本人もまだまだ頑張れるんだ」という気持ちを抱いて戦後が始まったわけです。

 そして、3.11の東日本大震災の後、沈んだ気持ちになった日本を元気づけてくれたのは、サッカーの女子ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」でした。体の小さな選手が、私よりも大きな選手に勝った。日本の選手が一致団結して同じ目標に向かっていったとき、大きな選手に勝てるということを証明してくれたと思います。

 その後、ロンドンオリンピック・パラリンピックでの日本選手団の活躍がありました。あの時、東京・銀座で行われた選手のパレードには50万人が集まったといわれています。あの様子を上から撮影した写真が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの招致を決定づけたと言ってもいいと思います。五輪招致の支持率は低いといわれていましたが、実際はあれだけの人たちが応援に来てくれたわけです。

 これから2020年まで、スポーツはグッと盛り上がっていくでしょう。それを2020年で終わらせてはいけません。みなさん、スポーツの推進という同じ目的を共有する我々の仲間です。日本スポーツのチームの一員として多方面からご支援、ご協力をいただきたいと思っています。(談)