スポーツで経済、地方を活性化できる
もう一つの大きな取り組みはスポーツにおける「国際競技力の向上」。この目的は一目瞭然で、大きな大会で日本選手が活躍できるようにサポートすることです。
そして、日本のスポーツ界の国際的な地位の向上も大きな目標になっています。各スポーツの国内競技連盟(NF、National Federation)から国際競技連盟へと人材を送ることなどによって、日本の存在価値を高めながら、競技ルールの改正や国際大会の誘致などで優位性を確保していく取り組みです。
このシンポジウムに参加している皆さんが特に興味を持っているのは、スポーツと経済のかかわりだと思います。例えば、スポーツによる地域経済の活性化。新たなスポーツ環境の整備の推進、地域スポーツコミッションヘの支援、各地のスポーツイベントの創出・誘致、それからプロスポーツ団体のマーケティング機能の強化支援などによって、地域経済を元気にしていく取り組みです。
日本は南北に長く、特定の条件を持った地方でしかできないスポーツもたくさんあります。マラソンやトライアスロン、オープンウオーターの水泳競技など、各地域で開催される大会もあるでしょう。南北に長い地理を生かして季節性のある競技を行ったり、独特の地形を活用した競技大会を開いたりするような取り組みもあると思います。それらを通じて、スポーツで経済、特に地方を活性化できるのではないかと考えています。
経済関連で、スポーツ競技団体の発展基盤の強化についての話をしましょう。今、オリンピック競技だけでも30競技ぐらいの団体が日本に存在しています。
本当にさまざまな競技団体があります。非常に資金が潤沢な団体もあれば、そうでない団体もある。困っている団体に支援をしていくと同時に、資金を獲得・管理できるようにある種の経営コンサルティング的なこともお手伝いしていかなければなりません。
スポーツは「カネを食うばかり」と言われがちですが、実は「カネを生み出すものである」という新しい展開にしていく必要があります。だから、ここにいるシンポジウムの参加者のようなみなさんと一緒にスポーツ産業を大きくしていきたい。「スポーツと健康」「スポーツと食」「スポーツとアミューズメント」といった連携を強化して、どんどん産業を大きくしていきたい。
そのためには、もっとスポーツの魅力を発信していかなければならない。マーケティングなどに優れたスポーツ経営人材の育成も急務でしょう。
各競技団体では、「選手のために競技環境を全面的に整備するんだ」という現場の意見と、「いや、スポーツはビジネスだ」という人とが常にぶつかり合いながら運営しているんですね。これは決して相反する話ではなく、マーケティングを十分に意識した試合や競技団体の運営を考えていかなければなりません。
スポーツビジネスによる海外支援や、海外でのビジネス展開をサポートするようなことも必要でしょう。そして、スポーツ関連のベンチャービジネスを育成することにも取り組んでいきます。スポーツ団体の発展基盤の強化ということでは、障害者スポーツ団体を、もっと事業化することも手伝っていきたいと考えています。
発信力の強化という観点では、例えば、ロンドン五輪のときに日本水泳連盟のソーシャルメディアをフォローするファンは2倍に増えました。大きな大会に合わせて、スポーツに関する情報発信を強化することで相乗効果が生まれるのではないかと思います。
まだまだ日本では、スポーツの魅力が伝わっていないのではないでしょうか。例えば、米国に比べると日本はカレッジスポーツのビジネスがものすごく弱い。先日、大学スポーツをサポートしてくれる企業を訪問して、もっと頑張ってくださいと激励してきました。
皆さんの方がよくご存じと思いますが、米国のカレッジスポーツの放映権や、チームの監督ヘの報酬は日本に比べて桁違いに大きな金額です。日本はどうでしょうか。高校野球は全国大会の1回戦からテレビ放映がありますが、大学になると途端に露出がなくなってしまう。
競技によっては、インカレで優勝しても新聞に載るのは2、3行の記事だったりします。大学のスポーツの方が高校よりもレベルが高いはずなのに埋もれてしまっている。もっと掘り起こしていきたいと考えています。