複雑な技をテレビで瞬時に解説

 富士通が2020年の先を見据えて開発している技術の一つが、冒頭の体操競技の採点技術になる。中核となるのは選手の動きを捉える3Dセンサーと、3Dセンサーのデータを解析する技術だ。

 「3Dセンサーのデータを、事前に用意した骨格などの人体モデルと照合し技の難易度などを算出する」(田中氏)という。現在、日本体操協会と連携することで、データ解析用に向けて技のデータを集めている最中だ。

図●選手の動きを3Dセンサーでキャプチャーし、分析しているイメージ
図●選手の動きを3Dセンサーでキャプチャーし、分析しているイメージ
(画像提供:富士通)
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 富士通は3Dセンサーで取得した体操選手のデータを採点だけでなく、体操選手の練習に使ったり、テレビ放送用のコンテンツとしても提供したりしたい狙いだ。

 練習の場合、体操選手が練習をする際に、お手本となる選手の技との相違を数値で提示するといった使い方を想定している。「もう少し上」といった感覚ではなく、「『あと3度開くと、得点が上がる』といった指導が可能になることがメリット」と東京オリンピック・パラリンピック推進本部 プロモーション統括部 統括部長の松本 豊氏は説明する。テレビの観戦では、体操に詳しくない視聴者でも分かるように、技の解説を瞬時に提供するコンテンツの作成などを想定している。

 体操選手の動きの解析で磨いた3Dセンサーデータの解析技術は、将来的に「人の動きを解析する技術として、高齢者のリハビリの支援といった分野に応用を考えている」(田中氏)。

ゲーム機のコントローラーを片手にスポーツ観戦

 富士通が2020年に向けて実用化に注力するもう一つの分野が、スポーツ観戦の支援だ。その中でも複数台のカメラで撮影した画像をリアルタイムで処理し、360度の映像を提供する技術の開発を進めている。

 複数台のカメラで撮影した画像を瞬時に画像加工用のクラウドサービスに送信し、クラウド上で360度画像として編集。それをコンテンツとしてクラウドサービスからコンテンツとして提供できるシステムを開発中だ。

 「360度画像の作成には様々な企業が乗り出しているが、当社はリアルタイム性を追求していきたい」と田中氏は説明する。「カメラからクラウドにデータを送信する際のエンコードやデコードの高速処理に強みを持つ。それを生かしていきたい」(田中氏)という。

 テレビで360度画像を視聴する場合、ゲーム機のコントローラーのようなものを使って、画像を操作できるようにするといった使い方を想定している。「2020年までに実用化し、その後、さまざまなスポーツ観戦全般で使われるような技術を目指していきたい」と田中氏は強調する。