先ほども触れたように、今、成人が週1回スポーツをする割合は約42%ほどです。我々はこの数字を2021年までに65%にしていきたいと思っています。この数値を実現することによって、現在41兆円近くにまで膨らみ、年々増加している国民医療費の抑制につながると考えています。

 では、具体的にどのようなことをしていくのか。まずは今年から「運動・スポーツ習慣化促進事業」というプロジェクトをスタートすることとしています。これは、スポーツを通じた健康増進施策や、スポーツの習慣化につながる取り組みをする地方自治体を支援するものです。

 さらに、スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクトにも取り組んでいきます。例えば、忙しいビジネスパーソンでも気軽にスポーツに取り組めるようなムーブメントの創出や、最先端の技術・クリエイターと連携し、個人の行動変容を促すような新たなスポーツを開発するといったことなどです。さらに、障害を持った方々はスポーツをやる機会・場所がなく、現在、そのスポーツ実施率(週1回)は約19%です。この数字を40%まで伸ばすために、調査研究事業や日本障がい者スポーツ協会への補助などを通じた、障害者スポーツの振興に取り組んで行く予定です。

広義の意味の「スポーツ」で健康増進

 この第2期スポーツ基本計画では「一億総スポーツ社会の実現」というキーワードを用いて、スポーツの普及振興を推進していくことをうたいました。ただ、世の中にはスポーツが嫌い、スポーツに関心がないという方も一定数います。

 実際、インターネット上などではこのキーワードに対して「強制的にスポーツをやらされるのは嫌だ」といった意見が見られました。そうした意見を見て、なぜその人たちはスポーツが嫌いなのかを考えました。

 思い当たったのが小学校や中学校での体育の授業です。体育に対してネガティブな思い出があるため、スポーツが嫌いになったのではないかと思うのです。そうした人たちを減らすために、体育の授業をもっと楽しいものにしていかなくてはなりません。これはすぐにできることではありませんが、こうした取り組みも検討していきます。

 この基本計画で用いている「スポーツ」は、何もオリンピック出場を目指すようなレベルのものだけを言っているのではありません。例えば通勤時に1駅分を歩く、犬の散歩をするといったこともスポーツと言えます。今、私にとってのスポーツは、13階のオフィスを階段でのぼることです。このように、何らかの形で身体活動をするものだと捉えていただき、国民の方々にはできることから取り組んでいってもらいたいと考えています。(談)

(後編へ続く)