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「0.1秒短縮で1億円」 古田敦也が見抜いた本質

2017/03/10 05:00

内田 泰=日経BP社デジタル編集部

 「野球の指導者は、野球がうまい人でないとなれないのか。そんなことはない。目の付け所さえ分かっていれば、誰にでもなれる可能性がある」――。

 “野村ID野球の申し子”とも呼ばれ、独自の分析力でプロ野球選手として活躍した、現・野球解説者の古田敦也氏。同氏は2017年2月27日、選手・指導者・研究者などがスポーツを独自の視点で語るカンファレンス「A.L.E.14(エイル・フォーティーン)」に登壇。「いい指導者になろう」をテーマに持論を展開した。

「A.L.E.14」に登壇した野球解説者の古田敦也氏
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 古田氏のメッセージは明快だ。「どんなやり方にもメリット/デメリットがある。それを理解して、選手に的確にアドバイスできれば、選手から信頼を勝ち取れる」(同氏)。

 例えば、打撃で重要なポイントになる「脇」。ボールを打つ瞬間に脇が空いていたら力が入らないので、インパクトでは“締める”必要がある。日本では長らく「どうせ脇を締めるのだから、構えの段階からそのようにしなさい」という指導が一般的だった。

 “世界の王”こと王貞治氏を育てた故・荒川博氏が著した野球指導書が、古田氏の少年時代は教科書のような存在になっており、そこにも「構えはバットを傘のように立てて、脇を締めなさい」と書いてあるという。

 しかし、キューバ共和国やドミニカ共和国など海外の選手を見れば、違いは一目瞭然だ。多くの選手は脇を空けてバットを構えている。どうせ脇を締めるのなら、最初は空けて構えた方がインパクトで力が入り、球を強く打てるという考えが根底にあるからだ。

バットを持ってプレゼンする古田氏
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 そうした考えを持った選手に、「最初から脇を締めて構えろ」といきなり言っても聞き入れられない。「大振りになって打てないときに、脇を締めてみたらどうかとアドバイスをすれば効果があるかもしれない。メリット/デメリットをきちんと指摘して指導すれば、選手は聞き入れてくれる」(古田氏)。

 実は、日本の指導の現場で「絶対にやってはいけない」と言われていた構えで長く活躍した選手がいる。元メジャーリーガーで日本では千葉ロッテマリーンズでプレーした、ドミニカ出身のフリオ・フランコ氏だ。彼は両脇を空けてバットの先を投手に向けて構え、つま先をハの字にしていた。通常、ハの字にして構えて後ろ足のつま先が外側に向くと、体をひねって戻しにくくなり強い球を打てない。

 古田氏は、「日本の指導だと、彼のような個性のある名選手は生まれない。野球は常に変化している。変化に対応していくことが、いい指導者の条件」と指摘した。

キャッチャーとして得た教訓

 古田氏は目の付け所が重要になるエピソードとして、優れたキャッチャーを育てるための勘所を紹介した。

 キャッチャーに要求されるスキルは多い。投手のリード、コミュニケーション能力、リーダーシップ・・・。いずれも重要であるが、古田氏は自らの経験から「盗塁を阻止できないと投手の信頼を勝ち取れない」と話す。

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