アジアで通用する「日本流」のビジネス手法
セッションは、世界でスポーツビジネスを展開する中で各氏が感じているスポーツビジネスの潮流について、事例を交えたプレゼンテーションで始まった。
最初に登壇したのは、アジアや中東、オセアニア、アフリカなどで、スポーツマーケティングやコンテンツビジネスを展開している電通スポーツアジアで代表取締役社長兼CEO を務める森村國仁氏。森村氏は自社のケーススタディーを通して、日本流のスポーツビジネスの手法が、十分にアジアで通じるという現状を語った。
例えば、シンガポール最大級の参加型スポーツイベント「スタンダード・チャータード シンガポールマラソン(Standard Chartered Marathon Singapore)」では、箱根駅伝や、高校野球の春夏甲子園大会と同じように選手のバックグラウンドを紹介することで大会自体にストーリー性を持たせるという手法を採り入れ、シンガポールでも魅力あるテレビ番組の制作につながっているという。
「例えば、このマラソン大会に何度も参加して自己記録更新を目指すという参加者や、最高齢の参加者の挑戦に注目して情報を発信していく手法を取り入れました。日本ではよく使われる手法ですが、アジアではまだこうしたアイデアをテレビ番組の制作に採り入れていない国は多い」
日本流のきめ細やかなサービスもアジアでは強みになるという。その例として挙げたのは「東南アジアのオリンピック」とも呼ばれる「東南アジア競技大会(South East Asian Games)」だ。
「電通スポーツアジアは、2013年にミャンマーで開催された東南アジア競技大会のコンサルティングに取り組みました。ただ、ミャンマーでは様々な法整備が途上で契約書の書式も整っておらず、どこから議論を始めたらいいのか分からないという状況があります。契約書のひな形から我々が作成するなど日本流のきめ細やかなサービスを心がけることで、ミャンマー政府との連携を強め、大会を成功裏に開催できました。東南アジアでスポーツ熱を盛り上げることは、2020年にもつながると思っています」
この時の経験と実績を生かすことで、2017年にマレーシアで開催される同大会も電通スポーツアジアがサポートすることになったという。こうした事例を通して森村氏は「日本の先進的なモデルは、アジアでも通用するということを実感しています」と語った。