2018年4月にサッカーJリーグのJ1に所属する湘南ベルマーレの経営権を取得し、スポーツビジネスに本格的に参入したRIZAP。2019年1月にはアスリートを強化・育成するトレーニング・研究施設「RIZAP Lab(ライザップラボ)」を神奈川県平塚市にオープンするなど、これまで「ボディメイク」で培った知見と12万人分の身体データ(体重/体組成、毎日の食事、運動履歴、血液)をベースに、アスリートのパフォーマンス向上のメソッド確立を目指す。その視線はアスリートのみならず、一般の人にも向けられており、湘南地域に住む人たちの健康増進への貢献を大きな目標に掲げている。

 RIZAPグループは2018年11月14日、2019年3月期通期の業績予想について、営業利益を当初の230億円の黒字から33億円の赤字へと大幅な下方修正をしてメディアを賑わせた。11月時点で連結子会社が85社に達するなど積極的なM&A(合弁・買収)を仕掛けてきたが、再建が思うように行かない子会社も多かったことが原因だとする。瀬戸健社長は決算説明会で、新規のM&Aの原則凍結や、本業のボディメイクなど成長事業に注力する方針を明らかにした。「スポーツによるアスリートの支援や健康増進」ビジネスは今後の注力事業の一つである。同社マーケティング戦略ユニット ユニット長で、湘南ベルマーレ取締役の松岡洋平氏に、湘南ベルマーレを軸にしたスポーツビジネスの今後の展開などを聞いた。(聞き手=内田 泰=日経 xTECH)

湘南ベルマーレの試合の様子。スタンドから撮影(写真:湘南ベルマーレ)
湘南ベルマーレの試合の様子。スタンドから撮影(写真:湘南ベルマーレ)
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プロでの知見を汎用化して一般に提供

――2019年1月に「RIZAP Lab(ライザップラボ)」をオープンしました。世界のトップアスリートが使うトレーニング機器を導入し、RIZAPのトレーナーと強度が高いトレーニングを行ってアスリートを育成するのが狙いと聞いていますが、具体的にどのようなビジネスを想定しているのでしょうか。

松岡 これまでのトレーニング施設が正直言って貧弱だったので、建屋も刷新し、低酸素ルームなど世界のトップアスリートが使用する最新のトレーニング機器を導入しました。湘南ベルマーレスポーツクラブにはサッカーだけでなく、ビーチバレー、トライアスロンなど多くの競技のプレーヤーが所属しています。RIZAP LabはJ1の湘南ベルマーレだけでなく、他の競技のスポーツ選手や意識が高い一般のスポーツ愛好家が来たがるような施設にするのが狙いです。

「RIZAP Lab」でのトレーニングの様子(写真:湘南ベルマーレ)
「RIZAP Lab」でのトレーニングの様子(写真:湘南ベルマーレ)
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 稼働率の問題があるので、どこまで解放するかは未定ですが、有料でトレーニングや食事指導などを提供します。最初はプロを対象にしますが、ゆくゆくは大学のトップチームなどにも提供する予定です。RIZAP Lab単体でビジネスとして成立するようにしたいと考えています。

RIZAP Labに設置された低酸素ルーム(写真:湘南ベルマーレ)
RIZAP Labに設置された低酸素ルーム(写真:湘南ベルマーレ)
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――そもそも、「結果にコミットする」を標榜したボディメイク事業を手掛けてきたRIZAPがスポーツビジネスに参入したのはなぜでしょうか。

 

松岡 当社は“低糖質ダイエットの会社”というイメージが強いですが、本来は自己実現のための自己投資を後押しする企業なので、スポーツは大きな部分を占めています。RIZAPはこれまでもプロボクサーの村田諒太選手のようなプロアスリートにプログラムを提供し、そこで得た知見をサービスやプロダクトにフィードバックすることを実践してきました。これをチーム単位で初めて取り組むのが湘南ベルマーレです。

 やはり、プロは要求がシビアです。パフォーマンスが出てなんぼの世界なので、そこに至るプロセスや得られるエビデンスを一般の方が享受できるように汎用化して提供することは意味があると考えています。例えば、米ナイキ(Nike)の厚底シューズ「ヴェイパーフライ(vaporfly)」はトップ選手の要望を受けて開発し、実際に良い記録が出てヒット商品となっています。トップ選手に求められるものを一般に展開するのはRIZAPのビジネスでもあり得ます。