「ITpro」2016年11月24日公開の知られざる5G「「無線技術はほぼ検証完了」、ドコモが見せた5Gの最新開発状況」を転載した記事です。前回はこちら

「5Gの無線技術のコアとなる部分はほぼ検証できた」。NTTドコモの中村武宏5G推進室長はこうに語る。2016年11月16~17日にかけてNTTドコモR&Dセンタで開催された「DOCOMO R&D Open House 2016」では、10Gビット/秒を超えるような5Gの最新開発状況が披露された。

超高速・大容量化の鍵を握るMassive MIMO

 5Gの無線技術において、超高速・大容量化の鍵を握るのがMassive MIMOだ。Massive MIMOとは、水平方向と垂直方向に多数のアンテナ素子を配置したアンテナ、もしくは同アンテナを用いたMIMO伝送のこと。電波を送信するアンテナは、水平と垂直方向にアンテナ素子を増やせば増やすほど、ビームが立体的に細くなり、伝搬距離を伸ばせる。ビームが細くなれば、隣接するセルに対する干渉を減らせる。これによって同じ周波数帯を同時刻で繰り返し利用できるようになる。このような空間多重効果によって、Massive MIMOは容量を大幅に増やせる(図1)。

図1●多数のアンテナ素子を2次元に配置するMassive MIMO
図1●多数のアンテナ素子を2次元に配置するMassive MIMO
出所:「すべてわかる5G大全2017」
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 Massive MIMOでは水平方向、垂直方向にアンテナ素子を多数配置するため、アンテナサイズがどうしても大きくなってしまう。ここで、利用する周波数帯を高くすれば高くするほど配置するアンテナ素子の間隔を短くできる。5Gでは高い周波数帯の活用も検討しており、その点でもMassive MIMOは、5Gの要素技術として適している。ちなみにアンテナ素子は半波長間隔で配置するのが一般的という。3.5GHz帯の波長は8.6センチメートルであるため、アンテナ素子間隔は4.3センチとすればよい。10GHz帯の場合は1.5センチまで間隔を狭められる。

 DOCOMO R&D Open House 2016では、ドコモと共同で実証実験を進める国内外の通信機器ベンダーが開発したMassive MIMOアンテナが勢揃いしていた(写真1、写真2、写真3、写真4)。

写真1●15GHz帯を用いるスウェーデン・エリクソンのMassive MIMOアンテナ装置
写真1●15GHz帯を用いるスウェーデン・エリクソンのMassive MIMOアンテナ装置
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写真2●4.6GHz帯を用いる中国ファーウェイのMassive MIMOアンテナ装置
写真2●4.6GHz帯を用いる中国ファーウェイのMassive MIMOアンテナ装置
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写真3●5.2GHz帯を用いるNECのMassive MIMOアンテナ装置
写真3●5.2GHz帯を用いるNECのMassive MIMOアンテナ装置
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写真4●28GHz帯を用いる韓国サムスン電子のMassive MIMOアンテナ装置
写真4●28GHz帯を用いる韓国サムスン電子のMassive MIMOアンテナ装置
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実証実験でも超高速・大容量を確認

 DOCOMO R&D Open House 2016では、これら国内外の通信機器ベンダーと共同で進めている実際の実証実験の様子も披露された。