「ITpro」2016年11月22日公開の知られざる5G「超高速を優先して仕様化、見えてきた5Gのロードマップ」を転載した記事です。前回はこちら

 5Gのビジョンや要求条件が明確化してきたことから、5Gの標準化活動も加速している。

 まず国際標準を勧告するITUでは、前回紹介した通り、2015年9月に5G(IMT-2020)の利用シナリオや要求条件などをまとめた「IMTビジョン勧告(M.2083)」を策定。さらに2017年2月までに、5Gの技術性能要件や評価基準を取りまとめる予定だ。その後、2017年後半から2019年にかけて5G無線インタフェースの提案を受け付け。2019年終わりから2020年にかけて5Gの国際標準仕様を勧告するスケジュールを示す。

3GPPはフェーズ1、フェーズ2に分けて5Gを標準化

 ITUのスケジュールを見据えて、5Gの実際の仕様策定の中心となる移動通信システムの標準化団体「3GPP」は、5G標準化のロードマップを固めた(図1)。

図1●5G標準化のロードマップ
図1●5G標準化のロードマップ
出所:日経コミュニケーション2016年12月号特別レポート「5G(第5世代移動通信システム)」
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 具体的に3GPPでは、2020年の商用化向けに5Gの基本仕様を策定するフェーズ1と、すべての5Gの要求条件に対応するフェーズ2の2段階に分けて5Gの標準化を進める。早期の5G導入を目指す日本や米国、韓国などにとって、ITUが5Gの国際標準仕様を勧告する2019年後半のスケジュールを待っていたら、2020年の5G商用化には到底間に合わないからだ。

 3GPPでは、まず2017年3月までのスケジュールであるRelease 14において、5Gの仕様策定のベースとなる基礎検討を進める。続くRelease 15において、初の5G標準仕様となるフェーズ1仕様を策定する。Release 15は2018年6月までのスケジュルで、ここでは5Gの3つの方向性の中でも特に、超高速を実現するモバイルブロードバンドの拡張(eMBB)を優先して仕様化する。

 続くRelease 16では、超低遅延(uRLLC)や多数同時接続(mMTC)を含む、5Gのすベての要求条件に対応した、フェーズ2仕様を策定する。こちらは2019年12月までのスケジュールとなる。ここまでに3GPPで策定したフェーズ1仕様とフェーズ2仕様を、ITUが2019年末まで受け付けている5Gインタフェース提案に提出するという流れだ。

流れだ▲
3GPPは2017年3月9日、新たな仕様策定スケジュールを公開し、予定の一部を3カ月前倒した。

3GPPの基礎検討で見えてきた5Gの方向性

 3GPP TSG-RAN WG1の議長を務めるNTTドコモの永田聡5G推進室主任研究員は、現在の議論の中で、5Gの方向性がいくつか固まってきたという。