こづかいを握りしめて、駄菓子を買いに走った子供時代。多くの大人がそんな経験をしただろう。その価格は、子供のこづかいでも気軽に買えるように、今なお数十円を維持している。駄菓子屋で扱うような菓子やアイスは「物価の優等生」。最近、値付けで話題をふりまいたのが「ガリガリ君」だ。
70円のガリガリ君の「ソーダ」味(写真:赤城乳業)
70円のガリガリ君の「ソーダ」味(写真:赤城乳業)
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 たった10円の値上げのニュースが、世界中を駆け巡った。赤城乳業が2016年3月、それまで60円(税抜き)だったアイス(氷菓)「ガリガリ君」の価格を同年4月から70円に引き上げると発表したのである。

 一見すると、消費者が拒否反応を示しそうな値上げの話題だが、事前の予想に反して、「好意的な反応が多かった」(赤城乳業 営業本部 マーケティング部 部長の萩原史雄氏)。その主な理由は、1991年から25年間、同社が60円という価格を据え置いていたことにある。“25年間よくぞ耐えた”というわけだ。子供のころにガリガリ君をよく食べていた40代を中心に、「今も、自分の子供時代とほぼ同じ価格で販売しているとは」と驚きを持って迎えられた。

赤城乳業 営業本部 マーケティング部 部長の萩原史雄氏(写真:加藤 康)
赤城乳業 営業本部 マーケティング部 部長の萩原史雄氏(写真:加藤 康)
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 値上げのニュースを新聞や雑誌が取り上げた直後、赤城乳業が「謝罪CM」をテレビで放映したことがさらに注目を集める大きなキッカケになった。赤城乳業の会長以下、同社社員100人ほどが神妙な面持ちで同社本社前に立ち、「60→70」というテロップが画面に現れると全員が頭を下げるという映像だ。4月1日と2日のわずか2日間のテレビ放映だったが、その内容の奇抜さで世界的に話題になった。

 さらに放映後に動画共有サイトで掲載されたことで、より多くの人の目に留まった。米ニューヨークタイムズ紙や英BBCなど、謝罪CMを見た世界の名だたる有力メディアが、25年の長い間価格を据え置いてきたこととともに、日本のデフレや「謝罪文化」の象徴として大きく取り上げた。