適切なO&Mで設備利用率20%超える

清水 2000年前後に日本に設置された大型風車には、欧州メーカーが試行錯誤している過程で製造したモデルもありました。これらが故障したのは、「日本の風に耐えられない」ことや「日本は風力に向かない」からではなく、もともと技術的に未熟な面があったからです。

 未熟と言っても、致命的なものではないため、きちんとO&Mを行えば、長期間止まるようなことはありません。

――実際に日本で初期に設置された風力発電の平均的な設備利用率をどのように見ていますか。一般的には風車の設備利用率は20%程度とされています。

名古屋産業大学大学院の清水幸丸教授
名古屋産業大学大学院の清水幸丸教授
(出所:日経BP)

清水 正式な統計データはありませんが、自治体の設置した風車に関していうと、2000年ごろの聞き取り調査で3割が止まっていたという情報があります。そうなると設備利用率は14~15%程度かもしれません。一方で、風力専業の民間企業では初期でこそ18%程度でしたが、O&Mのノウハウが向上し20%を超える風車も出てきました。

 自治体が設置した風車の場合、そもそも風況の良くない場所に建設したケースもありますが、それ以上に専門家による適切なO&Mが疎かであったことも影響しました。厳しい自然と向き合う再エネ事業では、いかにO&Mが重要か分かります。

――三菱重工業が陸上風車から撤退するなど、日本に有力な風力発電メーカーが育たなかったのは、なぜでしょうか。

清水 三菱重工について言うと、欧米メーカーが主導してきた風力発電の技術革新についていけなかった、という面があります。三菱重工の風車は、ヘリコプター翼の応用でスタートし、欧州勢が厚翼に切り換える中でも、基本的に薄翼を改良したものでした。厚翼を欧州のブレードメーカーから調達するという選択肢もありましたが、そうなると重い厚翼を固定する技術が未熟で、付け根部分の強度が保てなくなります。