米加州に「風車の墓場」

――1990年後半から2000年にかけて、風車の大型化が進みましたが、その時期の風車は、長期的な信頼性が伴っていなかったということですか?

清水 長時間、強風にさらされる風車は、昔から故障との戦いでした。初めて発電用風車が本格的に設置されたのは米カリフォルニア州で、1970年代後半に100kW以下の風車が数多く設置されました。しかし、故障が相次ぎ、止まった風車が大量に放置されました。

 わたしも当時の状況を、米国で視察しましたが、動かない風車が一面に並ぶ様子は、まさに「風車の墓場」でした。しかし、その後、改良が進み、85年以降、米国では100kWクラスの風車が量産されて、商業的にもある程度、成功しました。

 ただ、当時、それ以上に大容量にしなかったのは、大型化すると羽根(ブレード)が壊れてしまったからです。航空機の空力設計を応用して設計された初期のブレードは、肉厚が薄く大型化すると強度が保てなかったのです。90年代に入って大型化が可能になったのは、風力発電専用の厚型のブレードが開発されたからです。この技術革新は、デンマークやオランダなど欧州の風車メーカーが主導しました。

――90年代後半に日本に設置された風車も、デンマークやオランダ、ドイツの企業が製造したモデルが中心でした。これはすでに厚翼だったわけですね。それでも故障したのはなぜですか。

清水 厚翼でブレードの強度は高まったものの、付け根の部分の強度や増速機、発電機などは、必ずしも大型風車専用に設計されていないことも多く、当初は海外でも故障が相次ぎました。欧州メーカーはこれらの要素技術に改良を重ねながら徐々に長期信頼性を高め、1990代後半から2000年には「壊れない風車」が実現していきました。

欧州で稼働する風車
欧州で稼働する風車
(出所:Vestas Wind Systems)
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