風力発電は、世界的に普及が進む一方で、国内では停滞が続いている。日本でも2000年前後、各地にウインドファームが活発に建設されたが、一時的なブームに終わった。固定価格買取制度(FIT)があっても、太陽光に比べて普及速度が上がらない。一方で太陽光についても大容量化によるコスト低下、海外製設備の導入など、風力と同じ道を辿っている。風力の挫折の軌跡から太陽光ビジネス関係者が学ぶ点は多い。名古屋産業大学大学院教授の清水幸丸氏(三重大学名誉教授、日本風力エネルギー協会顧問)に、日本で風力発電が苦戦してきた背景を聞いた。

名古屋産業大学・大学院の清水幸丸教授
名古屋産業大学・大学院の清水幸丸教授
(出所:日経BP)

RPS法で買取価格が急落

――国内では、1996~2002年頃、自治体や風力開発ベンチャーなどが、活発に大型風力発電設備を建設しました。その後、伸び悩んだのはなぜですか?

清水 いくつかの要因がありますが、直接的な理由は、風力発電にも再生可能エネルギーの推進策としてRPS(Renewable Portfolio Standard)法が導入されたことです。それまでは、約11円/kWhの長期固定価格での買取メニューが適用されてきました。

 RPS法は、再エネの利用割合を決めて電力会社にその購入を義務付ける仕組みです。電力会社は、入札によって最も安い買取価格を提示した発電事業者と購入契約を締結することになります。電力会社に課された再エネ利用割合が極端に小さいなか、入札を実施したことで、風力の買取価格は6~7円/kWhに下がってしまいました。

 そうなると、風力発電の事業性を確保できる風況は、平均風速6.5m/s以上のエリアに限定されます。そして、こうした好条件を備えた風力の適地を、事実上、大手電力会社が押さえてしまいました。東京電力がユーラスエナジーホールディングス(東京都港区)に出資して子会社化したり、関西電力によるエコ・パワー(東京都品川区)への出資がそれを表しています。