少量の燃料を正確に、なおかつ短時間に噴射するためには、燃料を勢い良く噴射させる必要がある。そのためディーゼルエンジンの燃料噴射圧は、ここ10年ほどで急速に高まった。
大型商用車などでは、ユニットインジェクターも一部使われているが、現在の主流は、コモンレールと呼ばれる燃料を一括供給するレールシステムからインジェクターに燃料を送り込むものだ(図7)。
1000分の1秒でノズルの動きを制御するため、従来のインジェクターより高反応なメカニズムが求められる。圧電素子であるピエゾを用いたインジェクターは、反応が速いことが特徴だが2000年頃に実用化されて以来、噴射圧を高めながら進化してきた(図8)。現在は第4世代となっており積層されたピエゾ素子の集合体が直接、ニードルバルブを駆動する構造になっている。
ガソリン直噴でも30MPa前後の燃料圧を誇るようになり、従来のディーゼルエンジンを上回るようになったが、直噴ディーゼルの燃料圧はケタが違う。大型商用車用では240MPaも実用化されている。
乗用車用でも200MPaの燃料噴射圧をもち第4世代のピエゾ式インジェクターを備えた最新のディーゼルは、1回の燃焼で最大9回もの噴射が可能だ。その反応速度は0.1ms、つまり1万分の1秒間隔で噴射を制御していることになる。
ソレノイド式インジェクターも年々改良が進み、高反応化が可能になり、今や200MPaの燃料圧を使って、1回の燃焼で5回の燃料噴射を実現できるまでになっている。ディーゼルエンジンの燃焼噴射圧が高いのは、多孔式ノズルを使い、燃料の微細化を図っていることもある。
圧縮比を上げるためにディーゼルエンジンのピストン頭頂部は、従来比較的平坦な形状になっていた。これに対し、現在の主流はピストンの頭頂部の内側を大きくえぐっている。直噴化によって無くなった副燃焼室の代わりにピストン頭頂部にくぼみを設けることで、圧縮上死点では小さな燃焼室を形成し、高圧縮化や噴射された燃料の広がりを調整することを可能にしている。
ピストンの素材も軽量なアルミニウム合金を使うのが一般的だが、強靭で耐熱性も高く薄肉化できることから、鋼製のピストンも登場している。