EGRは、構造面の違いで2種類に分けられる。燃焼室部分だけで排ガスを循環利用する「内部EGR」と、排気管から取り出して吸気管へと排ガスを戻す「外部EGR」だ(表)。
内部EGRは、燃焼室周辺だけで完結するシステムである。そもそも燃焼室内には残留ガスとして排ガスが一部残る。純粋にエンジンの燃焼効率を考えると、残留ガスは限りなく少ない方が望ましい。だが、状況により残留ガスを利用した方が燃費面などで有利になる状況も出てくる。
内部EGRは、本連載の第1回(2014年7月号)の「可変バルブタイミング機構」を利用して実現する(図2)。排気バルブを閉じるタイミングを遅らせて再び排ガスを燃焼室に逆流させることで燃焼室を暖めたり、スロットルバルブを大きく開けても新気の導入を減らしたりすことで軽負荷時のポンピングロスを低減させる。電子制御式スロットルバルブの導入により、内部EGRの積極的な利用が可能になった。
また近年、ディーゼルエンジンの低圧縮化を進められたのは、内部EGRにより冷間時の燃焼性を改善することができたことが大きい。自動車メーカーによっては吸気バルブさえも意図的にオーバーラップさせることで、燃焼室から吸気管内まで排ガスを逆流させて、吸気ポート内壁に付着した燃料の気化を促すために利用することもある。
こうした吸排気バルブの開閉タイミングの変更は、吸排気の脈動を乱す側面がある。このため、エンジン設計や制御の障害となりうるが、可変バルブタイミング機構の可変領域拡大により、吸排気の効率追求と両立できるようになった。つまり、内部EGRは新たな機構を必要とせず、制御の工夫だけで実現できるためコスト面でのメリットが大きいと言える。
内部EGRは、冷間時に利用することで排ガスの熱をエンジンの温度上昇を早めるために役立つが、温間時には逆に残留ガスとして燃焼温度を上昇させてしまう原因にもなる。燃焼温度の上昇は、ガソリンエンジンの場合はノッキングや、点火プラグやピストンの溶解などによるエンジンブローという最悪の結果を招く危険もある。ノッキングは、点火タイミングを遅らせれば回避できるが、燃焼エネルギーを駆動力として得るための効率は下がる。
ディーゼルエンジンでは、温間時にはNOXが増大してしまうことから、やはり内部EGRを利用する割合はかなり限られる。