日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第10回:4輪駆動システム(上) 高速走行時の安定性高める、センターデフの違いで4種類」の転載記事となります。

 機械式のフルタイム4WDは、センターデフの違いで4種類ある(表)。

表 機械式フルタイム4WDの種類
表 機械式フルタイム4WDの種類
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 一つめの「機械式」は、ギアの組み合わせにより前後輪に駆動力を配分するもの(図2)。機械式フルタイム4WDと言うと、通常はこの方式を指す。ベベルギア(傘歯車)を組み合わせたものや遊星歯車を利用したものがある。変速機からの駆動力をトランスファーによって前後輪に分配するが、前後のデフギアでギア比をわずかに変えることで、前後のトルク配分を設定できる。

図2 古典的な機械式センターデフの例
図2 古典的な機械式センターデフの例
傘歯車を組み合わせた機械式センターデフは、前後車軸のデフギアと基本的には同じ構造。間に収まるピニオンギアにより差動機能を実現する。図はAudi社の4WD技術「quattro」のセンターデフ機構で、デフロックはプロペラシャフトと噛み合うスリーブがスライドし、デフキャリアとも噛み合うことでデフを無効化する。
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 通常は4輪に駆動力を分配することで高い安定性、走破性を実現するが、FF(前部エンジン・前部駆動)やFRのデフギアと同様、一方の駆動輪が空転してしまうと車体全体で駆動力を失ってしまう。それを防ぐために差動を制限するLSD(リミテッド・スリップ・デフ)やデフロック機構を備える車種もある。