日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第10回:4輪駆動システム(上) 高速走行時の安定性高める、センターデフの違いで4種類」の転載記事となります。

現在、自動車メーカーが積極的に採用を進めているのが4輪駆動(4WD)システムである。目的は、滑りやすい路面や高速走行時の安定性を高めること。特に、差動装置としてデファレンシャルギアを設けて常時4輪で走行する、機械式の「フルタイム4WD」への期待は高い。

 4WD車はオフロードでの走破性を高めるための技術──。そう思われがちだが、実際には過酷な環境での走行を想定したものは少数派だ。自動車メーカーが乗用車で4WDを採用する主な動機は、滑りやすい路面での発進や加速性能の向上、および走行安定性を高めることだ。さらに、高速走行時の安定性の向上にも寄与する。

 走行安定性を高める目的で4WDを活用する技術に先鞭をつけたのがドイツAudi社だった。その後、SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)の人気が高まったことも手伝って、4WDの需要は年々増えている。最近では、トヨタ自動車が4代目となるハイブリッド車(HEV)「プリウス」で、同車初となる4WDの設定に踏み切ったほどだ。

 クルマは、エンジンの駆動力を路面に伝えている状態だと走行安定性を維持しやすい。4輪に駆動力を分散する4WDは、タイヤのグリップ力を有効に使い、駆動力を路面に確実に伝えられる。一方の2輪駆動(2WD)車だと、前後どちらかが駆動輪のため、オーバーステアやアンダーステアという状態を招きやすい。