日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第8回:ハイブリッドシステム 最大3個のモーターでエンジン駆動を支援」の転載記事となります。

 ホンダは車格に応じてタイプの異なるハイブリットシステムを開発し、使い分けている。最初に実用化した「IMA(Integrated Motor Assist)」と呼ぶ1モーター式は、エンジンの出力軸にモーターを直結し、その後ろにクラッチや変速機を連結した構造を採用していた。これは小型軽量なハイブリッドシステムを造れるものの、エンジンを停止したままモーターだけで走行するには効率が悪く、HEVの強みである幅広い走行条件で好燃費を維持するという仕組みを実現することが難しかった。

 現在の1モーター式は、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)とモーターを組み合わせ、エンジンとモーターの駆動力を切り離して使える(図5、6)。構造としてはエンジンとDCTを組み合わせ、奇数段の出力軸にモーターを直結している。モーターは常に駆動輪とともに回っており、変速機内で最終的に合力されるとはいえ、基本的にモーターとエンジンから別々に駆動力をタイヤに伝えているイメージだ。

図5 ホンダの「フィットハイブリッド」の7速DCTハイブリッドシステム
1速に遊星歯車を採用し、モーターを組み合わせる。メインシャフトにはモーターの出力が伝えられるが、エンジンは奇数段のみメインシャフトに出力を伝えるが、偶数段使用状態ではセカンダリーシャフトから伝わった力が、カウンターシャフトでモーターの力と合力され、ファイナルギアから駆動輪へと伝えられる。
[画像のクリックで拡大表示]
図6 7速DCTのシステム
1速はメインシャフト自体を遊星歯車機構のサンギアとして使用。プラネタリーキャリアは3速ギアと直結しており、減速後に3速ギアを使ってカウンターシャフトに出力を伝える。モーターはメインシャフトと直結し、エンジンが他のギアで出力を伝えている時にも3速ギアを介してカウンターシャフトに出力を伝える。ホンダらしいユニークな機構だ。
[画像のクリックで拡大表示]

 2013年6月に発売した中型セダン「アコードハイブリッド」では2モーター式を採用した。車両前部に駆動用モーターと発電機を組み込んだ(図7)。エンジンは基本的に発電機を動かす。電池残量が十分であれば、電池から電力供給するEV(電気自動車)モードで走行する。電池残量が少なくなるとエンジンは発電用モーターを動かす。発電した電力でモーターを駆動するほか、余った電力は電池に蓄える。エンジンの効率の良い領域で発電時の燃費を高められる。

図7 ホンダ「アコードハイブリッド」のハイブリッドシステム
エンジンは常時、発電機を駆動し、走行用モーターと電池に電力を供給する。市街地では電池の残量が充分であればエンジンは停止し、電池からの電力供給でモーター走行する。高速走行では巡航時は走行用クラッチを接続してエンジンの駆動力で走行し、加速時にモーターがアシストしてエンジンの負荷増大を抑える。
[画像のクリックで拡大表示]

 さらに70km/h以上の速度ではエンジンの駆動力を走行用にも使い、高速巡航などエンジンの運転効率の高い部分ではエンジンだけで走行し、加速などで負荷が高まった時にはモーターでアシストする。一般道ではシリーズ式、高速道路ではパラレル式を使い分ける。エンジンで走行するのは高速走行だけなので、変速機は搭載していないという割り切りぶりだ。