日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第7回:THS(トヨタ・ハイブリッド・システム) エンジンとモーターの駆動力を遊星歯車で柔軟に制御」の転載記事となります。

 THSの制御系は、HEVのECUを頂点に電力を変換するインバーターやコンバーターなどで構成する。通常のエンジン車は、運転者の操作を受けてエンジンECUでエンジンの出力や回転数を調整するが、THSではまずHEVのECUが運転者の操作から加減速の必要量を判断し、エンジンとモーターそれぞれのECUへと出力などの要求を送る。こうしたエンジンECUとの協調制御はもちろんのこと、後に解説するブレーキとの協調制御もこのユニットの役目だ。

 エンジンECUは、要求される出力などの条件に対応しながらできる限り省燃費となるよう、バルブタイミングや点火時期、燃料噴射量やEGRの導入量を調整する。

 PCU(パワー・コントロール・ユニット)は、モーターECUやインバーター、コンバーターを一つのパッケージにまとめたもの。発熱量も大きく、エンジンの冷却系とは別の独立した水冷システムを採用している。

 現行プリウスの場合、コンバーターは電池電圧の200Vをモーター駆動の650Vに昇圧している。さらにインバーターで650Vの電力を直流から交流に変換して、交流モーターである発電機や駆動用モーターに電力を供給する。逆に発電機やモーターで発電した交流電力はまず直流に変換され、次いで200Vに降圧して電池に蓄える。12Vの電装品やエンジンを動かすための電力を作るDC/DCコンバーターも、PCU内に収められている。

 電池は、重量やコストを抑えながら、燃費性能を高めることが要求される。トヨタの3列シートHEV「プリウスα」やプラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウスPHV」では、スペース効率の点からリチウムイオン電池を搭載している。リチウムイオン電池ほどではないが、ニッケル水素電池でも高出力型のセルが実用化されている。

 HEV用電池では、多くのセルをモジュール化して電圧を高めると共に内部抵抗を低減し、充放電の損失による発熱量を抑えるように工夫されている。さらに各モジュールに温度センサーを備え、電圧センサーと合わせて電池ユニットの状態を監視し、必要に応じて冷却する電池監視ユニットも組み込まれている。