クルマの基本動作である「走る」「曲がる」「止まる」。最近では電動制御が進み、効率良く機構を動かせるようになった。本連載では基礎的なカーメカニズムについての理解が深まるように、その仕組みを分かりやすく解説する。
クルマの基本動作を学ぶカーメカニズム基礎講座
目次
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1モーター2クラッチ方式、日産フーガのHEV変速機
ハイブリッド車用の変速機(3)
日産の「フーガ」や「エクストレイル」は、1モーター2クラッチ式を採用している。変速機の後端にもクラッチを備えるユニークな構造だ。エンジンとモーターの間にあるクラッチでHEV走行と、電気自動車(EV)走行を切り替え、変速機の後端にあるクラッチで停車中のエンジンによる発電を可能にした。
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トルコン構造をHEV変速機に流用する欧州勢
ハイブリッド車用の変速機(2)
欧州メーカーが開発したHEV変速機で特徴的なのが、既存のトルクコンバーターと変速機の基本レイアウトをほぼそのまま活用している点である。ミッションケースは専用設計するが、内部構造を流用しながらハイブリッド化することが可能だ。
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HEV変速機、主流はトルコンからモーターへの置き換えタイプ
ハイブリッド車用の変速機(1)
ハイブリッド車(HEV)の変速機は、モーターによるエンジン動力の補助とエネルギー回生機能を備える。エンジン車に使われるAT(自動変速機)やCVT(無段変速機)を置き換える、ハイブリッドシステムの中核部品だ。モーターでトルクコンバーターを置き換えるタイプが主流である。
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エンジンと変速機を直結するロック・アップ・クラッチ機構
トルクコンバーター(2)
ロック・アップ・クラッチ機構は、1990年代になって登場したトルクコンバーターの直結システムである。タービンをポンプと一体化したコンバーターケースと密着させることにより、流体クラッチを介さずに動力を伝えることができる。
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エンジンから変速機に、流体で駆動力伝えるトルクコンバーター
トルクコンバーター(1)
エンジンの駆動力を変速機に伝達するのがトルクコンバーターだ。自動変速機や無段変速機で使われている。通常は油で駆動力を伝達するが、一部領域ではエンジンと変速機を直結する。直結すると振動の要因になるが伝達損失が減り、燃費性能を向上させられる。
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NOx吸蔵還元触媒はコスト、尿素SCRは処理能力に強み
ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置(2)
NOxを還元する触媒としては、NOx吸蔵還元触媒と尿素SCRという二つの選択肢がある。端的に言えば、コストではNOx吸蔵還元触媒に、処理能力では尿素SCRに強みがある。
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ディーゼルの排ガス後処理、複雑な3段システムでNOxを無害化
ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置(1)
ガソリンエンジンに比べて、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)といった有害物質が発生しやすいディーゼルエンジン。このため、年々厳しさを増す排ガス規制を、エンジン単体の改良でクリアすることはほぼ不可能だ。重要な役割を担う、ディーゼルエンジンの排ガス後処理装置を整理する。
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ロックアップ領域の拡大でスポーティな走りを実現
ステップAT:自動変速機(3)
現在日本国内ではステップATは中型車以上の乗用車に使われ、小型車を中心にCVTが増えている。ステップATは効率が低い変速機というイメージがあるが、伝達効率が悪かったのは過去の話だ。
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多段化が急速に進むステップAT、10速ATも登場
ステップAT:自動変速機(2)
ステップATのメリットは、遊星歯車機構を使うことで、変速の制御機構を簡素化できること)。さらに遊星歯車機構により変速後の駆動力を再び後列の遊星歯車機構に入力する直列構造とすることで、乗数的に変速段数を増やせることだ。
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遊星歯車機構で変速するステップAT、許容度の高さで1日の長
ステップAT:自動変速機(1)
ステップAT(自動変速機)の特徴は、遊星歯車機構を重ねて配置することで6速以上の変速を実現している点。小型車で採用が多いCVT(無段変速機)と同様、燃費や効率を追求しているが、ロックアップ領域の拡大などでスポーティーな走りも実現している。
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CVTは構造の違いで3種類に大別、主流は金属ベルト式
CVT:無段変速機(2)
CVTは、構造の違いで「金属ベルト式」「チェーン式」「トロイダル式」の3種類に大別できる。金属ベルト式のCVTは、プーリーと、金属コマと薄板で構成したベルトを使い、プーリーで締め付けて駆動力を伝える。
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シンプルな構造で連続的な変速を実現するCVT
CVT:無段変速機(1)
変速時に駆動力が途切れず、連続的な変速を実現できるCVT(無段変速機)。変速比幅(減速比の上限/下限)を大きくしやすいため、巡航時の燃費性能に優れる特徴がある。MT(手動変速機)やAT(自動変速機)との差異化を狙った進化の方向性も見えてきた。
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直噴ディーゼル性能向上の鍵は燃料噴射の高圧、高反応化
乗用車向け直噴ディーゼルエンジン(2)
直噴ディーゼルエンジンで少量の燃料を正確に、なおかつ短時間に噴射するためには、燃料を勢い良く噴射させる必要がある。そのためディーゼルエンジンの燃料噴射圧は、ここ10年ほどで急速に高まった。
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気筒内に燃料を直接噴射、熱効率を改善した直噴ディーゼル
乗用車向け直噴ディーゼルエンジン(1)
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて3割程度燃費が良く、欧州やインドなどで多く採用されている。最近では耐騒音や耐振動、排ガス性能が向上し、日本でも搭載車が増えている。今回は、乗用車向けエンジンの特徴を紹介する。
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大排気量ディーゼルエンジンで進むEGRの積極活用
EGR:排ガス再循環(3)
内部EGRと外部EGRを状況に応じて切り替えて使ったり、組み合わせて両方を同時に使ったりするエンジンもある。特に排気量の大きい商用車向けのディーゼルエンジンではEGRを積極的に利用している。
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燃焼室で循環させる内部EGR、排気管から取り出す外部EGR
EGR:排ガス再循環(2)
EGRは、構造面の違いで2種類に分けられる。燃焼室部分だけで排ガスを循環利用する「内部EGR」と、排気管から取り出して吸気管へと排ガスを戻す「外部EGR」だ。
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燃焼温度を下げて燃費を改善する排ガス再循環
EGR:排ガス再循環(1)
エンジン燃焼後の排ガスを再利用する手段に期待が集まっている。EGR(Exhaust Gas Recirculation、排ガス再循環)は、排ガスの一部を取り出して再度吸気させる技術だ。排ガス規制への対応や燃費改善などに欠かせない存在になりつつある。
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VTEC採用のカム山切り替え型可変バルブリフト機構
可変バルブリフト機構(2)
カム山を切り替えて使うタイプの可変バルブタイミング機構では、バルブタイミングの変更に合わせてリフト量も変えたカム形状を備える。カム山切り替え型の可変バルブリフト機構には、ホンダの「VTEC」やドイツPorsche社の「VarioCam Plus」、同Audi社の「AVS」、富士重工業の「i-AVLS…
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吸排気効率を自在に操る可変バルブリフト機構
可変バルブリフト機構(1)
吸排気効率をエンジン回転数の全域で高めるために、最近のエンジンには可変バルブタイミング機構が搭載されている。だが可変バルブタイミング機構は、バルブを開いている時間を変えることはできない。今回紹介する「可変バルブリフト機構」は、最大リフト量を変えることでバルブの開いている時間を調整できるものだ。
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密閉構造見直しでアイドリングストップによる油圧低下を防ぐ
アイドリングストップ機構(3)
エアコン駆動のためにエンジンをどれだけ停止できるかも、今後のアイドリングストップにとって実際の燃費削減を図る有効な手段となる。発進を素早くするためにはステップATの変速機構を動作させておく必要もある。